今日もいちにち

にわ冬莉

1話完結

「今日はファッション誌デーかぁ」


 朝、勤め先で床に置いてある束を見、私は溜息をつく。

 書店勤務も一年を過ぎ、だいぶ色々なことに詳しくなった。


 開店前、まずやるのはその日発売の雑誌を開梱し、並べること。

 はっきり言って、力仕事だ。特にファッション誌は、重い。そして、切れ味が抜群に、いい。気を付けないと、指先かまいたちの刑が待っている。


 平台を片付け、先月号を抜き取り、今日発売のピカピカな雑誌を並べる。出来ればおまけなんか付けないでほしい。面倒が増えるから。

 表紙には、まだ少し早い薄手のワンピースを着て笑っているモデルの顔。

「美人は何着ても似合うなぁ」

 デニムにエプロン姿の私にはほど遠いスタイルに、溜息が漏れる。




 雑誌をすべて並べ終わると、今度は昨日間に合わなかった文庫本を棚に並べていく。


 私はまず、出版社ごとに分けて積み上げる。そこからあいうえお順に。あ行を左腕で包み込むように持つと、フロアへ。右手で文庫本を取り、補充。スカスカだった本棚がいっぱいになっていく充実感がたまらなく好きだ。ここからまた、お客さんの元に物語が旅立つ。


 テンポよく文庫本を棚に収め終えると、お昼。


 私は二階に上がり、今日発売のコミックを数冊手に取った。

 本屋で働いて一番良かったのは、これだ。

 お昼を早々に食べ終え、漫画を読む。いいとこで終わってるなぁ。先が読みたい!




 午後は発注作業。


 売れた本をまた仕入れるのか、そのままにするか。この本、まだ行けそうだな、と思えば頼むし、そうでなければ売り切っておしまいだ。とにかく、次から次へ新刊が出るのだから、同じタイトルをいつまでも置いてはおけない。


 おっと、こうしてる間に今日の新刊が来る時間だ。


 箱を開けると、独特な本の香り。


 二日前に頼んでた文芸大賞の作品が入ってきてる。よし、ポップと共に新刊平積みしなくっちゃ! いっちばん目立つとこ!

 


 私は、本が好きだ。

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