Alive

あとがき

　今回はAlive - Sheer Cliffをお読みくださり、ありがとうございました。身の毛もよだつような恐怖体験、如何でしたでしょうか。

　本作は『Curve(原題)』という映像作品に着想を得てアレンジを加えており、見るもの全てを怯えさせるような、おどろおどろしい人間の見えない悪意を表現したものです。

　昨今のインターネット社会というのは恐ろしいもので、一度何か失態を犯した人間が現れるとその人物の年齢・性別などといった個人情報から失態に至る経緯まで、諸般の事情は一切考慮せずに世間の見えない悪意によって私的に裁かれます。

　デジタルタトゥーと言われるように、画像や動画といった形で世に出回ってしまった加害行為者の過ちは半永久的に保存され、住所や通勤・通学先といった個人情報が特定され、家族や同僚・同級生など不特定多数の関係者にも迷惑が及ぶことになります。往々にして、過ちを犯した側に対する執拗な嫌がらせによる私的制裁は許容され、世間は黙認している状態です。法律上はたとえ軽犯罪やそれに類する行為であったとしても、一度世間に見つかってしまえば法的制裁よりもよっぽど苛烈な痛めつけが待っているのです。

　そんな人々による行き過ぎた私刑の残酷さをやんわりと表現するために、本作が出来上がりました。ですので、実際に足を痛めつけられて、崖に吊るされたまま死の恐怖と苦痛の最中で絶望して死んでしまったという哀れな人間は居なかったんです。──良かった...！

──本当に、良かったと思いますか...？