第一に、神話や魔術などに興味のある伝奇小説好きの人であれば問題なくこの作品の世界観にハマるだろう。
そしてこの作品は小説であるが故の描写や読み手の想像力を掻き立てる奥行きが感じられる。私はこの作品という魔術に催眠をかけられてしまったようでもあった。
キャラクターに対するビジュアル面での描写は他のweb小説と比べれば少ないものの、それを差し置いてあまりある掛け合いでのキャラ立ちは文芸作品のような趣きを感じられる。
各々のエピソード事態には推理物のような感覚で読みながら考察を進めていくというのがこの作品の一番の楽しみ方だと私は思っている。少しずつ明らかになっていく真実は昨今の物語のような解放的なカタルシスよりも、段々と登り詰めてくるような高揚感をもたらしてくれるはずだ。
この物語には神話や魔術などの知識はほとんど知らなくても読める作品となっているが、是非私からはそういった知識を持ち合わせた上で読むことをおすすめする。
※読み合い企画からのレビューです
何でも屋を営む主人公と、アルバイトの女子高生
女子高生は、主人公の制止を振り切って、とある猫探しの依頼を引き受けてしまう
主人公が探しに行くと、女子高生は首から上を何かに喰われていて──という衝撃的な導入から始まる本作品は、一つの依頼を一つの章とする、一話完結型の物語だ
本作品の特徴は、一人称でありながらも淡々と進む物語それ自体だろう
カクヨム平均よりも地の文が多めで、一つ一つの描写が丁寧に行われている
とは言え、読みにくいとか、固いといった印象はほとんどなく、高い文章力によってそれがこの作品独特の"雰囲気"に変換されている
そう、本作品は雰囲気が非常に優れているのだ
もちろん、物語自体も面白く、個人的には先に述べた衝撃的な導入から始まる"探し物"の章や、妖怪や霊感でなく悪魔が登場し世界観が広がった"あくまで占い"の章が好みだ
古今東西、怪異であればなんでもアリの本作、是非一度読んでみてはいかがだろうか