青年と少女は——と向き合い、レクイエムを奏でる。

 面白かったです。ついつい、一気読みしてしまいました。

 さて、本作は奴隷の少女『メル』と流浪の剣士『アスター』の出会いから始まります。奴隷であったために人として未熟なメルと、過去を引きずりながら人探しをするアスターが旅の中で人々と出会い、互いに成長していく王道成長物語です。

 確かに派手さは無いかもしれない。でも、この物語には確かな豊かさがあります。細やかな心の動きを緻密に書き上げ、なおかつ分かりやすく読者に届けるその手腕には脱帽するところであります。

 また心理描写だけでなく、ストーリーも伏線や設定をうまく組み上げる予定調和と意外性の絶妙なバランスが美しいと感じました。特に……おっと危ない、思わずネタバレしそうになってしまった!

 これは前述の物語の豊かさにつながることでもあるのですが、キャラクターの造形がいいですね。メインキャラクターの深みがあることは勿論ですが、あまり出番のないキャラクターの歩んできた人生も想像させられることが多く、彼ら彼女らが生きている存在だと思わせる迫力があります。

 さて、設定自体はダークファンタジーよりの世界観を持つ本作ですが、その厚い雲の隙間から光が差し込み、照らされた草木が微笑む。そんな希望と世界に生きる人々の強さを感じさせる作品でした。この作品に巡り合えたことに感謝を!

 では皆さん、ぜひ読んでみてください! 

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