🔳エピローグ

 こうして一連の事件は一応の幕は閉じた。

 結局、すべての真相は明らかにはされず、模擬戦襲撃事件は反政府組織の犯行だったということになった。ファルケ曰く、ヴィオ連邦や旧王族なんかが複雑に絡んでいて高度に政治的問題だとか。国の上層部はファルケの父であるアールグレイン大統領を筆頭に慌ただしく動いているらしい。

 この事件で学園側の死者は不幸中の幸いでゼロ。セラフィムとミラは結構な怪我を追っていたが、ふたりとも命には別状はなく後遺症の心配もいらなかった。

 そして事件から一週間が経った。

 ここは生徒会長室。

「汝、ルマディナルを護る剣と成れ」

 ぺちり。

 ミラがセラフィムの肩に剣を当てる。

 しーーーーん…………。

 しかし何も起こらず部屋の中に沈黙が落ちる。

「成れっ。成れっ。な~~~~れ~~~~っ」

「……ミラ。痛いんだけど」

「あ。ごめんなさい」

 やけくそ気味に頭をぺちぺちしている剣をセラフィムが払いのける。あの日以降、ミラは【叙任の儀ラストオーダー】を発動出来ないでいた。

「やっぱりダメか~。アタシも見てみたいんだけどね。火事場のなんとかってやつだったのかしら」

「……な、何が原因なんでしょうか」

 その光景を見ていたファルケとエールが頭を捻っている。

「うう、力不足ですみません。使いこなせるように特訓しますっ。………………とっくん?」

 ミラが小首を傾げる。

「あ! そう言えば今日ルゥくんとリナリアちゃんと朝練するんでした! か、会長、私はこれで失礼しますっ」

 ぺこりと頭を下げてから、ミラが慌ただしく生徒会長室を後にする。それを半眼になりながら見送ってからファルケが口を開いた。

「セラフィムくん。最近、ミラちゃんの様子はどう?」

「様子……?」

「ほら今回の件で色々あったでしょ?」

「あー……たぶん心の中で思うところはあると思うけどまあ大丈夫でしょ。ミラ、ああ見えて結構図太いところあるし。今朝もごはんおいしいっておかわりしてたよ」

「そっか。まあ元気ならいいけどね。しっかし、今回キミたちはあれだけ頑張ったんだからせめてミラちゃんの“国賊の娘”って誤解だけでも解けてバチは当たらないと思うのよね。そうすればあのももうちょっとみんなと仲良くできるかもしれないのに」

「……で、でも今回のことは他言するなっておじ様から言われてますからねぇ」

「うう~。なんかモヤるわ~」

「わ。わ。ファルケちゃん八つ当たりはやめてください~~~~」

 なにやらじゃれ合っているファルケとエール。そんなふたりをそっとしておきながらセラフィムはミラの後を追うために生徒会室を後にした。

 “国賊の娘”の誤解が解ければもう少しみんなと仲良くなれる、か。

 セラフィムはその件についてそこまで案じていなかった。

 なぜなら――。

 廊下に出ると、少し先でミラを見つける。

 そこにはルゥとリナリアの姿もあった。

「ったく、朝練に遅刻するたぁまた一か月後に模擬戦があるってのにたるんでやがるな。ケガ人だから手加減してたが今日からまた鍛え直してやるぜ」

「ええ!? 全然手加減していたようには感じしませんでしたけど!?」

「ナイスアイデアね、ワンころ。あたしもビシバシいっちゃおうかしら!」

「リナリアちゃんまで~~~~」

 なぜなら今でも彼女の周りには大切な仲間がいるのだから。

「ちょっとセラフィム! なに珍しくニヤニヤしてるのよ!」

「あ、ニセモブ! いいところに来やがったな! 組手だ組手、勝負しやがれ!」

 ミラが手を差し出してくる。

「それじゃあフィムも行きましょうか」

「うん。そうだね」

 その手を取ってセラフィムは輪の中へ入って行くのであった。

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国賊の娘の付き人 パンドラボックス @pandorabox666666

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