シーグラスのような、青春記。

 当時19歳だった作者さんは、親しい女友達とアジア旅行に行きます。彼女は背が高く、きれいな顔立ちをしており、男性のような振舞い方をすることもあって「王子」と言われていました。
 そして作者さんは、「王子」が自分に対して友達以上の気持ちがあることに旅行へ行ったときに気づくのです。作者さんが友人の気持ちに気が付いたときの心境や、その後の二人の関係について丁寧に描かれています。

 個人的な印象ですが、何となく「シーグラス」のようだなと思いました。

「シーグラス」というのは、ガラスの破片が波にもまれて、角がとれ、表面に細かい傷が付くことで磨りガラス状のかけらになったもののことをいいます。作者さんにとって、当時の「王子」の気持ちを知った上で向き合う(もしくは思い出す)ことは、シーグラスのようにちょっと傷ついたものをみるようでいて、でも、どこか美しく、きれいなものを持っているようだなと思いました。

 友達のような、でもそれ以上の感情があるような。19歳の子どもとも大人ともいえる間の時期に感じた出来事を、鮮やかに描いた作品です。気になった方は読んでみてはいかがでしょうか。