【 緑青の土地守りの章 】
現実の「わたし」と夢の「あたし」が交差するお話。
現実世界で「わたし」はいつもの生活をしつつ、夢の世界で「あたし」は使命を果たす――——。
第一章の主人公は、ふたりの息子を持つ母親でもある、樹里。
"緑青の土地守りとしての力"が強くなる中、少しずつ夢の中での時間が長くなっていき・・・・。
交差する現実と夢の狭間で、樹里が最後に選ぶものとは――――。
穏やかで優しい物語という軸はぶれず、時に切なく、時に強い想いが綴られるこの章は、鮮やかな新緑のような色彩で描かれた水彩画のよう。現実では、"母"としての樹里の生活がごく普通に流れており、夢の中ではひとりの"女性"としての時間が待っている。そのふたつの異なる時間の流れが、読んでいる側が物語に引き込まれる魅力のひとつといえるでしょう。
【 朱火の土地守りの章 】
第一章とはがらりと雰囲気が変わる第二章。
こちらは樹里の息子である彬と、"朱火の土地守り"である蘇芳のお話。
育った環境がまったく違うふたりだが、本家の頼み、というより命令に近い強制力によって、同居することに。
刺々していた蘇芳だが、少しずつ母である樹里に心を開いていく。
口は悪いが素直で純粋な蘇芳に、今まで感じたことのない感情が芽生え始める。
ふたりの関係性の変化が楽しい、第二章。
クールな優等生の仮面を被った彬と、炎のように激しく、蝋燭の火のように優しい一面も持つ蘇芳。
完結はしていませんが、毎日更新されているので、楽しみが途切れません。
作者さまの想いがたくさん詰まった今作、まだ読んだことのない方は必見です ♪
最初の章まで読了してのレビューです。
作者さまご自身が、恋愛ファンタジーと銘打たれています。もちろんそのとおりであり、現実世界とゆめの向こうをゆききしながら、主人公さまがだれかを想う気持ちを描くというのが、少なくとも最初の章では主題のひとつとなっています。
やさしく柔らかな表現とあいまって、するすると読み進むことができますし、主人公さまの目線、こころに沿いながら、物語に存分にひたることができます。
それで、終えてもいい。
でも、わたしは、もっと強いなにかを、感じてしまいました。
おそらく、作者さまの、念。
現実世界に鋲打たれ、この世界でいのちをおくるしかないわたしたち。作者さまももちろん同様であり、ふだんは上手に、しずかに隠しているはずです。
遠くへ! の、想い。
それが、感ぜられてしまいました。
遠くの世と、いまの世をつないで、肉と霊とを、ゆめわたりしながら、行き来する。その描写と、おいてある気持ちは、わたしには、乾くような、叫ぶような、焦燥感のようなものに、感ぜられ、震えました。