先が見えない二人だからこそ、繋いだ心の先に見える光がある

どんなに惹かれあった恋愛にも障害は付き物です。
特にこの物語の二人には幾つもの障害があります。
女性同士の恋愛である事、不倫関係である事、年の差がある事。
そんな幾つもの障害があるこの物語を読み進めていく内に、傷みにも似た切なさと、人を愛する事の尊さを感じました。

二人の状況は泣きそうなくらい切実であるにもかかわらず、この物語から感じる温かさや、優しさの源は二人が求め合う愛である事に他なりません。
自分の心に正直に生きる事は決して正しい事ばかりではなく、時に身近な誰かを傷つけてしまう事があります。それにもかかわらず、たとえ誰かを傷つけても激しく求める愛があるのではないでしょうか。

この物語が教えてくれるのは、そんな正直に生きる事の難しさ。
そして、愛する「沼」である人の存在は、決してネガティブなものではなく、眩しいほど光射す、かけがえのないものにもなりうるという事。
それをこの僅か5000文字に満たない二人の物語から感じる事ができました。
本当に素晴らしい作品です。

(「沼らせ男/沼らせ女」 恋愛ショートストーリー特集/文=カフカ)

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