第310話 ヤバかった副領主
静まり返った大臣共は、顔を伏せつつも副領主リコートの動向を目で追っていた。そのビクついた視線を受けながら、表面上はにこやかフェイスで揉み手をしながら大臣共に近づいて行くリコート。
………ねえ悟郎さん、この副領主って目が逝ってるし、ちょっとキモイ系の匂いがすると思わない?え?不味そう??いや〜アイツは食わない方が良いと思うよ?きっとポンポンペインになるからね?悟郎さんには美味しい物だけ食べて貰いたいんだ。だからジャーキーどうぞ!
そう悟郎さんとヒソヒソ話をしていたら、グルッ!と首を勢い良く回して、副領主のリコートが突然俺に顔を向けた。
「…………ああ、シローさん。初めまして、私ノクイルヨン様の副領主を務めさせて頂いておりますリコートと申します。ご挨拶が遅れて失礼致しました。私、ずっーーーと貴方にお会いして直接お礼が言いたかったんですよ!ノクイルヨン様の体調不良の原因を除き、更にその仕掛けも看破されたご慧眼!健やかなるノクイルヨン様を取り戻して頂き、誠にありがとうございました!私、感謝してもしきれません!お身体のご不調で思うように政務が出来ずに苦しむノクイルヨン様………それでも尚、激務に立ち向かうそのお姿……。私は何度も!何度も!その苦しみを代わって差し上げたいと思っておりました!ノクイルヨン様の苦しみは私の苦しみですから!ですが、結局その願いは叶わなかったのです。あの時ほど己の無力さに憤りを感じた事はございませんでした!ですので、その怒りは全て今回の事を起こした首謀者とそれに加担した者達へ向けることで昇華させたく東奔西走し、願わくば漏れなく『獄門ダンジョン』送りにする為、諸々を携えてやっとノクイルヨン様が待っている、このランティエンスに戻って来たのです!…………………それと私、とても耳が良いです」
え?マジキモッ!何をべらべら言ってんだよコイツ!ノクイルヨン様の副領主って何だよ?!それを言うならランティエンスの副領主だろうがよ?!どうしよう悟郎さん!ツッコミ所が多過ぎて意味分かんないんだけど?!
「……………耳が良いです」
「わ…ワカリました………すんません……」
とりあえず謝っておこう。副領主は触っちゃいけない系だった。今後は適切な距離を取ろう。そうしよう。
「いえいえ、良いんですよ。なんと言ってもシローさんはノクイルヨン様をお救い下さった方ですから。ああ、それと肩にいるのが従魔の『ゴロー』さんですね?念の為にお話しておきますと、私を召し上がれるのはノクイルヨン様だけですからね?ご承知おき下さい。」
「(ヤバいヤバいヤバいよ!コイツ!!悟郎さん、絶対に関わっちゃ駄目だからね?!)」
「(ニャッ…(わかった…))……ブルッ!」
おい!悟郎さんが変態オーラのせいで震えたじゃないか!本来なら抗議をする所だけど、コイツはアンタッチャブル認定だ。後は領主様に任せよう。変態の舵取りも領主の仕事だ!
野放しの変態は本来討伐対象だけど、そいつは副領主だし、対象は領主様だけだし、他人に迷惑か向かない様にちゃんと首輪を付けて躾けておいてくれよ?!マジで!!
「はぁ…リコート!さっさと仕事をしろ!」
「はっ!仰せのままに!!」
額に手を当てて溜め息を付きながら、ご領主様はリコートの軌道を修正した。
どうやら
口が悪い異世界転生者 いずいし @isuzu15
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