第5話 家族

「いやぁ、午前中に入ってくれてありがとうね龍樹せんせ」

「俺よりも喜之さんにお礼を行った方がいいな。あの人もお前のために俺を送り迎えしてくれているんだからな」

「へぇ、あの人送り迎えもしてくれる優しい人なんだね」


 蒼はニヤニヤしながら言った。


「それで、家族の話をさっさとしてくれ」

「あぁ、そうだねそうだね。じゃあ話をしようか。俺が大学生時代、親をズタズタに殺した時の話を」


 蒼は前よりも笑みを深めさせながら言った。




 自分の殺しの経験に役立ちそうな医療関係の大学に進んだ蒼はそれなりに普通の生活を送りながらも、中高よりももっと人を殺した。


 自分に嫉妬を感じている人、自分が好きな人を人気のない場所に誘っては殺して、そのままにしたりなどをしていたが、そんなのが毎日あると流石に捜査が始まってしまうため何人かはバラバラにして埋めた。


 その作業はとてもめんどくさかったが、これも日常を壊さないためであったためだと思うと楽にはなった。


 おまけに大学では一才隙を見せないように演技をした。優しく、気遣いがある大学生。その演技をしているときは苦痛というものを感じていた。


 大学の初めての夏になり、講義も早めに終わって片付けをしていると。


「なぁ蒼。この後どっか行かね? 丁度早めに学校終わったんだからさ」


 男子同級生の誘いに蒼は優しく断った。


「あぁ、すまん。今日少し勉強をしたいことがあって今日遊べねぇわ」

「マジかー。まぁいいよ。お前、結構真面目だしな」


 男子同級生は残念と思いながらまた後でなとその場を去った。

 

 誘いを断った理由は今日、いつものようにSNSであったママ活を募集していた人物に会うためだった。


 授業終わったらすぐに会うかのようにしていたため、その場所に向かった。


 場所は池袋駅周辺。お互いにDMで当日どんな服装なのかを写真で撮って送っていた。


 蒼も勿論この時は陰キャの格好をし、伊達メガネと白いマスク。髪を少しだけボサボサにさせて待っていると


「あの、君がA君かしら」


 声を掛けられ、見上げると乗っていた写真と同じの女性が立っていた。


 顔立ちはとても若々しく、プロフィールに載っていた30代には見えないくらいだった。


「あぁ、はい。そうです。あなたがヨシコさんですか?」

「えぇ。そうよ。随分顔を隠しているのね。可愛い顔が見れないじゃない」

「もしものためです。それじゃあ行きましょうか」

「いいわよ」


 ヨシコという女性は笑顔で蒼の腕を掴んで歩いた。


 一緒にいる時の条件は蒼が行きたい場所というと簡単に引き受けてくれた。


「ちなみになんだけど、蒼君は何歳なの?」

「あぁ、それは秘密です。ご想像にお任せいたします」


 蒼は笑みを浮かばせながらいうと、早々とヨシコに予約をさせた古いホテルに向かった。


 ホテルに着くと、早々と会計を済ませ、鍵に書かれている部屋に向かった。防犯カメラに映らないようにしながら部屋に入った。


 部屋はピンクの光で染まり、大きめなベットが一台とテレビ。右にある部屋に入ると大きい風呂があった。


「あら。古い割にはいい部屋ね」


 ヨシコは部屋全体を見ながら荷物を置いた。


「先にシャワー浴びてもいいかしら」

「えぇ。構いませんよ」


 蒼はヨシコにそう言うと、ヨシコはそそくさと浴室の中に入ろうとした。


「あっ。ちなみになんだけど、どんなプレイが好き? 君、結構タイプだからなんでもいいわよ」

「あー、それじゃあ上がってからでいいですか?」

「わかったわ」


 ヨシコは深い笑みを浮かべさせると風呂に入った。蒼は鞄の中に入っているペンチとハンマーに強力な接着剤を付けた針がついている物、そしてこっそり買った穴開け用のハンダゴテを確認をした。


 テレビをつけようと考えていると、ヨシコが濡れた髪をタオルで拭きながらベットに来た。


「ふぅ。いいお湯だったわ。じゃあ、どうぞ」

「あぁ、ヨシコさん。そのまま寝てください」

「えっ? あら。そうゆうプレイが好きなの?」


 ヨシコは笑みを浮かばせながら胸元を見せようとしてきたが、蒼はそばにあったアイマスクをヨシコの目元に当てた。


 そしてゆっくり寝かせると両手を縛りつけた。


「ちょっ。あまり跡はつけないでね。旦那にバレちゃうわ」

「へぇ、旦那がいんのにこんなことしているんですね」


 蒼はマスクと伊達メガネを外し、上半身裸になるとアイマスクを取った。ヨシコは初めてみる生の彼を見て「あら」と顔を赤らめさせた。


「いい男じゃない。旦那よりもずっといいわ」


 ヨシコはそう言ったが、蒼はその言葉と表情にイラつきを感じ、頬を強く叩いた。


 その行動にヨシコは「何するのよ!」とちょっとだけ怒りが込められた声を放った。


「あぁ、なんでって、あんたの顔にイラついたんだよ。この淫乱女。旦那がいるっていうのに何人かとやっていたんだろ。それに、30代の人を拷問するのは初めてなんだ。前々では10代か20代を拷問して殺していたけど」

「は? 拷問? あなた、まさか」


 何か言いかける瞬間、そばに置いてあったハンダゴテを手に取って素早く首に当てた。


 当てた瞬間にヨシコは声をあげた。


「おー。30代の女を拷問した時はこんな感じなんだ。なるほどなるほど」


 蒼は焦げたハンダゴテを見つめながら思っていると、ヨシコは助けを求めようとしたため、ハンダゴテを置くとポッケの中に入れていたハンカチを口の中に含ませた。


「あーあ。俺がもう少し大人だったら地下倉庫を作って、そこで色々と拷問をして、いろんな叫びを感じられるんだけど、今は俺は若いし、有名人でもなんでもないただの平凡な大学生。だから、ごめんね」


 蒼は笑みを浮かばせながら頬にハンダゴテを付けた。



(ふぅ、今日はいい情報を入手できた)


 蒼は終わるとシャワーを浴び、新しい服に着替え、部屋にも何も証拠は残っていないかを確認してからそっと裏口から駆け足で出て行った。


 額に浮かぶ汗を拭いながら電車に乗り、途中で公園のトイレで服を先ほどの服に着替えるといつも通りに普通の顔をしながら家に帰宅をした。


「ただいまー」

「お帰りなさい蒼。今日も大学は楽しかったかしら」

「あぁ、とても楽しかったよ」


 蒼は笑顔で言うと、母親はなぜだか一瞬だけ目を細ませてた。


「ん? どうしたの母さん」

「いっ、いや。ごめんね。変に見ちゃって」

「別にいいけどさ」


 蒼はそう言いながら部屋で休むと言って自分の部屋に向かった。入るとカバンの中に入れているハンダゴテを取り出し、血が綺麗に拭き取られていることを確認をすると引き出しを取り出した。


 中にあるのは辞書のケース。中身は本棚に置いているため、医師に関する辞書を買ったとしてもただの参考書のためだということで不自然に思われない。


 ケースの中にハンダゴテを入れると、元の場所に戻した。さすがに両親は息子の部屋を勝手に荒らしたりはしないはずだと考えながらもいつばれるのかがおかしくはないはず。


 そう思いながら着ていた服も取り出し、これは後でそっと出しておこうと考えた。だが、気になったのは母親だ。母親はなぜあのように目を細めたのだろうか。


 気にしながらも、何も変なのがないかを確認すると棚の中に入れていた本棚から小説を取り出して読んだ。


 数時間後、父親も会社から帰ってきた。母親はご飯ができたわよと蒼に声を掛けた。


 蒼はスマホをいじるのをやめ、テーブルにある椅子に座ると3人でいただきますと言って食べ始めた。


「最近どうだ。大学の方は」

 

 父親はご飯を食べながら蒼に質問をした。


「順調だよ父さん。そう心配しないで」


 蒼はにこやかに言いながら野菜を口の中に入れた。


「そうか。ならよかった」


 父親は安心しきったように言った。蒼は黙々食べながらチラリと母親を見た。母親も安心し切ったような感じの表情をしていたが、少しだけ不安の表情が混じっていた。


 ご飯を食べ終え、お皿を片付け、風呂を沸かすと蒼、父親、母親と言った順番で入って行った。


 それぞれ入り終えると、10時あたりでそろそろ寝るかとと父親が口をした。


 母親も「そうね」と言って大あくびをした。蒼はその行動になぜだか違和感を感じた。


(普段寝る時あまり言わない父さんなのに、何か裏があるな)

 

 蒼は普段から家族の行動を見ていたため、違和感を感じ取った。


 蒼は先に2階に行き、部屋に戻った蒼は両親の行動を伺うためにドアに耳を当てて両親が寝室に行く音が聞こえ、そのまま扉が閉められる音が聞こえた。すぐに蒼は部屋を出ると音をたたないようにしながら寝室に前に行き、壁に耳を当てた。


 中から両親の声が聞こえてくる。


「ねぇ、あなた。やっぱりあの子、裏で何かしているわよ。きっと」


 母親の声に蒼の心臓がドキドキと鳴り出した。


「まさか、この前見たことか?」

(この前? まさか、殺した奴と一緒にいるところを見られたのか?)


 蒼がそう思っていると扉の方から母親の「えぇ」と言う声が聞こえた。


「あの子が隣で珍しく女の子と一緒に歩いているなと思ったら、すぐにあの子が殺されたっていうニュースが流れ込んできて」

「そんなのただの偶然じゃ」

「偶然なんかじゃないわよ!」


 母親の叫びに蒼はまさかと心の中で思っていた。


「あの子の部屋から、少しだけ血がついた服が出てきたのよ」


 母親の言葉に蒼は目を見開かせた。次には父親の焦りの声が聞こえてきた。


「おいおい、まさかそれって本当か?」

「本当よ! さすがに持ち出したら気づかれると思ってさすがに持って来られなかったんだけど、本当に、本当にあの子の服が」


 母親の涙声を聞いた蒼は焦りというより怒りとイラつきが沸々と浮き上がった。


「それは鼻血で汚れたも、いや、それだったら俺らのどっちかにに言うか。じゃあ、それじゃあ」

「えぇ、どうしましょう。あなた」


 母親は父親に縋り付くような声でで言った。


「……おまえは、自分の息子を殺人鬼としてニュースに取り上げられたいか?」


 父親の質問に「いや」と母親は声を上げた。


「あの子を殺人鬼としてニュースに取り上げるなんて、私たちこれから」

「俺らの人生なんかどうでもいいだろ! あいつのこれからが大事だろ」


 父親の怒号に蒼は弟以来だなと思った。


「ともかく、本当ならおまえはどうしたい。いいか。今さっき言った言葉をあいつに言うなよ。そんな言葉、無神経な奴が言う言葉だ」

「……そうね。あなたの言う通りだわ」


 母親は自分の言葉に失言をしてしまったことに父親に謝った。


「それじゃあ貴方、自殺でもしましょう」

「自殺?」

「えぇ。家族の思い出を残して、それで自分たちの死で償いましょ」


 母親の言葉に父親は「そうだな」とから笑いの声が聞こえた。


 蒼はそっとその場を離れ、深いため息が出た。


(はぁ、まさかあれを見られていたとはな……仕方ない。母さん、あんたが悪いんだからね)


 蒼は事前にガムテープとから睡眠薬を買わなければならないなと思った。



 2週間後、睡眠薬を薬局で買い、ガムテープも買うといつこの前聞いた思い出の場所とやらの報告が来るのかを待っていると、ついに父親が旅行の話を持ちかけた。


 いくのは夏休みが始まったすぐのことだった。場所は東京都の山奥の別荘。


 話を聞いた時そこで死ぬんだなと思った。


(さぁて、何を使おうか。そして、何を言おうか)


 蒼はそのことを考えながら荷物を準備していた。



 大学の夏休みが始まってすぐに父親か母親のどちらかが予約をした別荘に向かった。


 車を運転している中、両親は偽りのように楽しく話している。蒼は外の風景を眺めながら両親を拷問する時の表情を考えていた。


「そろそろ着くぞー!」


 父親の声に蒼は前を見た。


 大きめの屋敷が一軒立っているのが見えた。


「中々いいね」と母親

「あぁ、結構景色も良さそうだ」と父親


 そう言いながら別荘の管理の家に着き、入ると父親は受付の男性に名前を言うと受付人の人は簡単な説明をし、何かわからなかったときのためのパンフレットと別荘の鍵を渡した。


「それにしてもお客さん、今日はあなた達だけなので思う存分騒いで大丈夫ですからな。ですけど、物だけは壊さんように」


 受付の男性は笑顔で3人に言った。


「もちろんですよ。教えてくださりありがとうございます」


 そして再び車に乗るとその別荘に向かった。


 2階はなく、一階だけで部屋がいくつか別れており、茶色の壁と透明な窓と黒い屋根。


 父親は管理人からもらった鍵で扉を開けた。


 家の中は管理人がエアコンを効かせてくれたのか涼しい空気が肌を触る。


 中は思ったよりもまぁまぁ広く、キッチンとソファにテレビ、おまけに外で寝られるかのような椅子までが置かれていた。


「あらー。中々いいわね。おまけに外でほんも読めるわよ」

「おぉ。そうだな。花火もあるから夜楽しもうな」


 両親が荷物を置きながら言い、蒼は「そうだね」とにこやかに言った。


「そういえば、他の人もいるのかな?」

「えっ? あぁ、確かに。


「何か飲み物入れてあげるから2人はゆっくりしてて」


 蒼の言葉に「あら? いいの。ありがとう」とお礼を言った。


「コップは私が持ってきた赤いカバンの中にあるからね」

「あぁ、ありがとう」


 蒼は母親に言われた赤いカバンの中から紙コップと飲み物を取り出し、一度冷蔵庫の中にペットボトルを入れた。


 すぐにすり潰した睡眠薬をコップの中に入れ、冷蔵庫の中からペットボトルを取り出し、飲み物を注いだ。


 注ぐ音が死のカウントダウンのように聞こえ、思わず笑みが浮かんだ。


「はい。どーぞ」


 蒼は両親に飲み物を笑顔で渡した。2人はお礼を言いながら疑いもせずに飲み物を飲み干した。


 そして数分後、2人は睡眠薬が効いてきたのかスヤスヤと眠った。


 蒼はすぐに2人をガムテープで縛り、窓を閉めると再び両親に駆け寄って何か隠し持っていないかの確認をした。

 

 ソファなどを出来るだけ血がついては困るものをどかすと、カバンの中からブルーシートを地面にひき、壁に貼り付けた。


 その上に眠っている両親を置いた。蒼は深いため息を漏らすと、行く途中に買っておいた飲み物を口にした。


(はぁー、弟並に疲れるな)


 蒼は拷問道具を置くと両親が目を覚ますまでテレビを見たりなどをして時間を持て余した。



 そして時計が6時になった瞬間に、両親の声がし、蒼は振り返った。


 案の定、両親はなぜ自分が手足を縛られているのかにとても驚いていた。


「えっ? えっ? どうして縛られているの?」


 母親は驚きの声をあげた。父親もなぜだと思いながら蒼に声を掛けた。


「蒼! お前がこれをやったのか?」


 父親は険しい目で蒼を見た。もちろん母親もだった。


 蒼は小さくニヤリと微笑んで言った。


「あぁ、そうだよ。俺だ。飲み物に睡眠薬を入れたんだ」

「なっ!」


 両親は蒼の言葉に驚きを隠せないでいた。


「じ、じゃああなた、私が見かけたあの」

「あぁ、まさか母さんに見られていたなんて思いもしなかったよ」


 蒼は残念そうにしながらため息を付いた。


「そっ、そんな、な」

「ここに来たのは皆で自殺をするためなんでしょ。最後の思い出作りで」


 蒼は髪を掻いて言うと、「なんでそれを」と言った。


「聞いたんだよ。この前珍しく父さんがそろそろ寝ようって言うからそれで違和感をね」


 ニヤニヤとしながら話すと、両親は怯えた表情を見せた。そこで蒼は言った。


「弟。そして中学生の同級生。高校生の他のクラス。そして、大学での行方不明者と事件……全部俺がやったんだ」


 全ての犯行を自白をすると、両親はさらに驚愕の表情を浮かばせた。


「お、とうと。あなたがあの子を殺したの?」


 母親は震えた声で言った。蒼は「うん」と平然に答えると父親は叫んだ。


「なぜだ! なぜあの子を、実の血の繋がった弟をあんな残酷な」


 叫ぶ父親に蒼は軽めのハンマーで殴りつけた。ぐはっと父親の声が聞こえ、気付けば額の横から血が流れている。


「なぜ? それはな、お前らが気づかないうちに差別というものをしたんだ」


 そこで蒼は今まで溜め込んでいたことを吐き出した。


「あいつがいる時、いつもいつもいつもいつもお前らは俺がただ好きなのを食べているだけのに、弟がいない時に食え。早めに食べれば問題起こさないだろ。お兄ちゃんなんだからしっかりしなさい。お手伝いの時なんかあいつはあんまやんないのに怒んない。むしろほんのりの叱りだけ。祭りの時なんか一緒に食べ物買いたかったに俺の時は1人で行ってこいって、ふざけんなふざけんなふざけんなーーーーーーーー! テメェらテメェらのせいだ!!! 早く早く死ねよあぁぁぁ」


 蒼は気付けば父親を半殺し状態のままにしていた。死ぬ前の魚のように全身をピクピクさせている。


 一息を付いて横を見た。母親はその光景にただ涙を流していた。


 蒼は近づくと何か言っていた。


「何?」


 声を掛けるとさっきより少し大きめの声で母親は言った。


「ごめんなさい、蒼。まさか、まさかそんなに追い詰めていたなんて、本当に、本当にごめんなさい」


 母親は泣きながら謝罪をし出した。


「弟が生まれた頃からそんなふうに感じさせて、ごめんなさい。だからお願い、こんなことはやめて。私も、お父さんと一緒に自首をするわ。だから」


 言いかけた瞬間に蒼は血まみれのハンマーを速親に目掛けて振り下ろした。鈍い音が響き、そして母親が床に倒れ込んだ。


「何その発言、いい子ぶってて気に食わん。本当にあんた、俺を産んだ母親か? 今の発言、反吐が出るほどのセリフだ。それに最初、自分の人生のほうが大事な発言をしたくせによく言えるよ。気持ち悪いこと言わないで」


 蒼はそう言葉を吐くと、横に置かれていた別の道具を使用して拷問をした。拷問をしても母親はただ虚な目をしていて面白くはない。思わずハンダゴテを太ももに上げると声を上げた。


 そばで縛られていた父親はただやめてくれと涙声で頼んでいたが、そんなことはお構いなしだった。



 2時間後、両親は顔の原型を止めないぐらいの形になり、深いため息と汗が出た。


「はぁ、あーめっちゃ疲れた」


 こうは言ったが、とても心が清々しい気持ちになりながらも両親を土下座するかのように袋の中にいれ、重たい2人を荷物運ぶためのキャリーカートに乗せ、父親の靴を履くと山道の中に入った。


 埋めたのは屋敷の後ろの奥だった。山にある貸別荘なだけあって沢山の木が生えている。


 受付の近くにあったスコップで深く掘ると、乱暴に両親を入れるとブルーシートと拷問で使った器具を入れ、再び土を中に入れた。


 そして出来るだけ掘られたことをバレないように細工をすると再び駆け足で別荘に戻り、どこかに血がついていないかどうかも隅々まで確認をした。


「はぁ、はぁ。めっちゃ疲れた」


 時刻を見ると10時近くになっていた。


 蒼は汗を拭うと、両親を殺すのにここまで疲れたと口にしながら部屋に強盗が寄って来て襲った風に見せるために外に出ると窓ガラスをそばにあった石で割った。


 素早く中に入り、必死に抵抗をしたかのように器具などを荒らし、自分の腕に切り傷を付けた。


 ナイフの指紋を取ると別荘の下に投げ、駆け足で受付の家まで向かった。



「その後、受付の人が警察に電話。それから色々としたかな? ここまでの説明はめんどくさいから解釈して終わり」


 蒼はパチパチと手を叩きながら話を終えた。龍樹は気付けば自分の額から汗が一筋だけ流れているのがわかった。


 ここだけが気温が変わったように感じられるほどだった。


「すごいねぇ龍樹せんせ。汗が流れているよ。ここだけ夏に感じたのかな?」


 蒼はニヤニヤしながら言った。


「お前、母親にそんな言葉を言ったのか? 辛い中お前を産んだ、母親に」


 龍樹は母親に最後に言った言葉に強く心が痛んだ。


「おいおい。龍樹先生。俺の話を聞いていたか。あの母親は最初俺なんかよりも自分の将来のことを心配をしていた。だから最後にそう言ったんだ。悪くなく、正しい言葉ではないか」


 蒼は足を組んで反抗の言葉言った。龍樹も言い返せないでいた。


「ちなみになぜ俺が午前中に呼んだということは、両親を土から掘り返してやってくれないか? もぉ俺は死刑になるからさ。あのままだと少しだけかわいそうだからねぇ」


 蒼は微笑みながら言った。


「あっ、場所はここだからね」


 蒼は過去に家族と共に行った場所を書いたノートの切れ端を渡した。


「じゃあ先生。見つけたら報告をお願い致しますね」


 蒼はニヤリと微笑んで言った。


 龍樹は駆け足で部屋を出ると、喜之にこのことをつげると捜索隊の連絡をし、蒼が書いてくれた場所にお互いに向かった。


 書いてくれた場所に着くと、最初に受付の人に事情を説明をした。


 大勢の警察の人に驚きながらも受付の人はすぐにその場所に案内をした。

 

 蒼が言った屋敷の後ろに行き、捜索隊のリーダーらしき人が隅々まで探すよう指示を出すと、スコップと棒のようなものを掴んだ捜索隊はそれぞれ掘り進めて行った。


「見つかるといいな」

「えぇ」


 喜之と龍樹は見つかることを願いながら借りたスコップで出来るだけ真ん中らへんを掘りながら言った。


「ここに何か固いものが当たりました!」


 捜査員の男の声に皆は一斉に振り返った。


「ここです!」

 

 捜査員の男の言葉にスコップを持っていた仲間が懸命に掘り出した。掘っていると徐々に何か包まれているのが見えてきた。


 掘り続けると袋が見えてきた。残りの土をどかすと、そこにはブルーシート、そして犯行に使われた錆びた道具と白骨化した2人の人間。


 その光景を見た龍樹は「見つけた」と口にした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る