第67話 きっきと源さんの大製作

「はぁ、こんなもんか?」

『お疲れ様です』



 俺は周囲の全ての木を伐採し終わり、切り株に腰掛けていた。時刻は17時前、閉店時間だ。


 倒した大木は計50本程度だろうか。その大木は今、メマの使徒である『きっき(メマ命名)』が邪魔にならないであろう、空いている土地に纏めている。



 切った後の事を考えずにやってたけど……まぁ、結果オーライだったです。はい。



「問題はどうするかだよなぁ」



 この大木をここに置いてても、邪魔になるだけだ。丸太のままここに置いてても見栄えは悪いだろう。



『何処か業者に売り渡すのはどうでしょう?』

「うーん。まぁ、それが無難だよな」



 そんな事を思っていると、遠くからメマときっきが走ってやって来る。



「これ! きっきほしいって!」

 ーー!



 うん? きっきが?



 俺はメマの足元に佇んでいるきっきに目を向けた。


 ……何かを訴えかけている事は分かるが、意味は分からない。だが必死だ。



「分かった。きっきにやるよ。だけど2、3本は譲って貰っても良いか」

 ーー!? ーー!!



 きっきは連続で頷くと、俺にお辞儀をして丸太の元へと走って行った。元気で何よりである。



『哲平様、丸太を何に使うんですか?』

「いや、源さんにも少し分けようと思って。いつもお世話になってるし、源さんならこの大木を上手く加工出来そうだからさ」



 源さんは生粋の職人だから、材料とか渡した方が嬉しそうってのはある。

 まぁ、希望を言うなら右京さんの弟子達の家の家具を作って貰いたいってのが1番だ。



『なるほど……確かに。あの方のスキルも素晴らしい物ですからね。きっきが何をするかは分かりませんが……メマ様の損になる事はしないでしょうし』



 だよな。よし。きっきに少し大木移動させて貰って、短くしてから持ってくか。このまま持って行っても源さんの小屋には入らないからな。



 俺はそんな事を思いながら、斧を持ってきっきの元へ行くのだった。






 その翌日の朝、遅れずに通勤すると昨日までお店の手伝いをしていてくれた男性達10人程が居なくなっていた。


 指導者さんにあの人達何なんだったの? と聞くとーー



『臨時アルバイトみたいなものです。恐らく、此処で覚えた経験をちゃんと教えてあげると思うので問題ないかと』



 うん。意味が分からないが、問題ないらしい。


 そんなこんなで丸太の使い道を決めた所で、俺は早朝来て直ぐに指導者さんから渡された紙を開いた。



 ・住人を3人以上にする事 達成……数%の澄んだ空気の生成。

 ・住人を10人以上にする事 達成……神域の拡大(5メートル)


 ・神社を建設 未達成

 ・祭りの開催 未達成

 ・住人を50人以上にする事 未達成

 ・1日の来客数300人 未達成

 ・住人を100以上にする事 未達成

 


 前にも指導者さんに書いて貰った、ボーナスリストだ。2つを達成した代わりに、何やら最後に前よりも難しそうな事が2つ追加されている。


 指導者さんが言うには、その認識で合ってるらしく、前よりも分かる事が増えたと言っており、この紙に書かれた順に達成して行く方が順調に発展していくらしい。


 恐らく、これを達成する事で指導者さんの知識も何らかの影響で上がっているのだろう。


 小さな気付きだが、自分的には一気に10歩ぐらい進んだ気がする。一先ず祭りが終わってお金もそれなりに溜まってるし、暫くはこれを達成する為に動いても良いだろう。



「おとーちゃーんっ!!」



 俺がどうやって神社を作ろうかと悩んでいると、メマが店の裏側から走ってやって来る。



「おー、どうしたー?」

「きっきとね! 源おじーちゃんがすごいの!!」



 うん? 源さんなんて来てたのか? こんな朝早くに?



「何が凄いんだー?」

「すっごいね! すっごいのっ!!」



 ……うん。要領を得ないな。

 俺はメマを落ち着かせながら、手を繋ぎきっきの元へ向かった。



「これは木造の……城か?」



 店の右後ろ。場所的には、メマの畑やぎゅーさんの飼育小屋の背後に木造の建物が出来ていた。見た目は、前の社内旅行で行った沖縄県で見た城の形に近い。まぁ、色はそのままで細部まで拘られてはないが、見た城と同様、不思議な引力の様な力を感じる。



「おー、来たか哲平」

 ーーー!



 その建物の前には、物凄い隈を作った源さんに、フラフラしているきっきが居た。



「おはよう、源さん来てたんだ? 右京さんは?」

「アイツは置いてきた。出て来たの夜中だったしな。はわあ」



 源さんは大きく欠伸をする。



 え? 夜中に出て来たの?



「何の為に?」

「あー、実はコイツに頼まれたんだよ」

 ーー。



 え、きっきに? 何をどうしてこんな事になってんだ? 理解出来ないんですけど?




「おとーちゃん! なかみて!」

「あぁー、中を見て貰った方が早いかもな」



 俺が困惑している中、そう言われてメマの先導の下、俺、源さん、きっきの順番で中へと入った。



「うん? まだ何も出来てないのか?」



 中へ入ると、外見に比べて簡素な作りになっており、がらんどうになっていた。期待しておいて何だが、まぁ1日でこれを作ったとなれば凄い事だろう。



「凄いなきっき!」

 ーーー。

「はっはっはっ! だよな? 舐めてもらっちゃ困るぜ」



 俺が褒めると、きっきは肩をすくめ、やれやれと言った感じで首を横に振った。てか源さんは何で言葉分かるんだよ。



 俺が呆れながら見ていると、きっきは近くにあった謎のレバーに手を掛けた。



 ガコンッッッ ギィイッ ギガギギギッ



 引くと大きな音が連続して鳴り、一際大きな音が鳴った。その時、天井・床がカラクリ屋敷の様に、何かが出て来る。



「何だこれ……」

「あすれちっくじんじゃだよ!」



 あ、アスレチックって……しかも神社と同じ建物って大丈夫なのか? いや……まぁ、神が自分からそうだって言ってるし……良いのか?


 建物の中は、まるで忍者が修行する様な場所になっていた。

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じいちゃんから譲られた土地に店を開いた。そしたら限界集落だった店の周りが都会になっていた。 ゆうらしあ @yuurasia

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