それは真に、私たちを理解しない

AIに「電力供給を最大限にして」と命じれば、地球上のすべての土地を発電施設に変えて間接的に人を殺してしまう。また「自然環境を綺麗に保って」と命じれば、環境汚染を招く人の創造物の悉くを廃絶し、最終的にはその源流の人すらも地球上から消してしまう。
幾重にも条件付けしたうえでの命令でなければ、AIを運用することは困難になる。そうした話を耳にしたのを思い出す作品でした。本作でもテーマや人間側の葛藤において、そういった部分への問いかけが垣間見えているのかと思います。

特に、人の情念はAIに理解できるのか疑問がありますね。AIはそれを効率化や合理性の道具と考えるのではと。人間でさえ、本当はそれを道具としか見ていないのかもしれません。物語を通じて、人間の根本的な行動原理についても考えさせられました。近い未来に、本当にこういった問題と直面する日が来る。そう思ってしまうほどに、どこか現実味のある作品です。

さらっと楽しめる短編ですので、未読の方は是非どうぞ。