選ばれなかったヒロイン達の共同体と奮闘

pixiv版を先読みしてしまったので、まだこちらには投稿されていないところまで知ってしまいましたが、物語は一貫して「選ばれなかったヒロイン達の共同体と奮闘」で構成されていると感じました。

既に攻略ヒロインが勢揃いしている様相とあって、読み始めた当初は名前を覚えなければ……と肩に力を込めてしまっていましたが、ヒロイン達は妖怪の先祖返りが大半を占めていることが功を奏しています。元となる妖怪の特徴から端的に人となりが描写されており、労せずしてそれぞれの個性が分かるでしょう。世界観説明も煩雑ではないため、早々に物語へと誘われました。
また主人公はいわゆるゲーム転生した人物ですが、現代人的な我があまり強く出ていないためか、「辿る運命を知ったIFのヒロイン」の像とも重なります。

タグには「ガールズラブ」とありますが、あくまで現状、個人的には欠落を抱えた女性達の共同体……シスターフッド的な印象を受けました。そもそもあらすじからそんな雰囲気は漂っていませんが、イチャイチャキャッキャウフフな甘さはないものの、絶望的な状況下でも頼れる相手がいて一人ではないという安心感から、読み進める手が重くなることもありませんでした。

ゲーム系異世界転生もので現代伝奇、かつシスターフッドという異色の取り合わせは類を見ないものなので、それら好きな方は勿論、ひと味違った系統を求める方にもオススメできる作品です。