暴れる犯人
今日も元気に、探偵が犯人を指さす。
探偵「犯人はあなたです。
現場に残されたこの、醤油の入った魚の形をしたやつ。これが何よりの証拠です」
警部「確かに、これは動かぬ証拠だな。よし、犯人確保だ!」
警部の指示で、警官たちが犯人に近づく。その時、犯人がそこにあった金属バットを手に取り振り回し始めた。
ブン。
犯人「来るなぁ!!」
ブンブン。
警官A「おい、危ないぞ!」
警官B「抵抗するんじゃない!!」
ブンブンブン。
警官たちを近づけまいと、バットを振る犯人。
犯人「俺はまだ、捕まるわけにいかねえんだ!さち子の無念を晴らすまではなあ…!!」
警官A「誰だよ、さち子って」
警部「観念しなさいよ」
ブンブンブンブン。
犯人「うるせえ!!お前らに、俺の何がわかる!?」
警官B「わかるとか、わかんねぇとかいいから、大人しく投降しろ」
犯人「くそぉ!!!」
ブンブンブンブンブン。
警部「探偵くん」
この状況に、警部は探偵の方を見やる。探偵は冷静な態度で、犯人に語りかけた。
探偵「やめなさい。そんなものを振り回したら──
危ないですよ?」
犯人「こっちはすでに人殺してんだ!!今更、危ないもクソもあるかあ!!!
オラ!どけよ!!ほらぁ!!早く!!!!」
ブンブンブンブンブンブン。
必死にバットを振りながら、逃走しようとする犯人。
警官C「動くな!!」
その時、犯人の前に一人の警官が立ちふさがり銃を向けた。
警部「ほら、こっちは鉄砲があるんだよ」
探偵「諦めなさい」
さすがの犯人も、動きを止める。たかだかバットを振り回したくらいで国家権力から逃げおおせるはずがない。万事休す。そう思った時──
犯人「…ん?」
よく見ると、銃を構える警官Cの手が震えている。
犯人「…何だ、震えてるじゃねえか」
警官C「う、動くなと言ってるだろう!!」
それを見て犯人は、強気を取り戻す。
犯人「人に銃を向けるのは初めてかぁ?俺がそんなもんにビビると思ってんのかよ!?」
警官C「ほ、本当に撃つぞ!!」
警官Cの表情は強張り、緊張で汗が流れる。
犯人「いいぜ?撃てよ」
犯人が余裕の笑みを浮かべながら、にじり寄る。
犯人「どうした…
ほら、撃てよ…
オラァ!!!!
撃てるもんなら、撃ってみろよ!!!!!」
警官C「わー」
パァン。
犯人「いっっった…」
警官Cの放った弾丸が、犯人の太ももに命中する。
警官A「今だ!!」
警官B「確保ぉ!!!」
警官AとBが犯人に飛び掛かる。
犯人は傷口を押さえながら、のたうち、絶叫した。
犯人「うわああああああ!!!!!!
血ーでてる、ちーーーー!!!!
救急車呼んでよ、救急車!!!!
きゅーーーーーーーーーーーーーーーーー
きゅーーーーーーーーーーーーーーーーー
しゃ~~~~~~〜〜〜〜〜あああああああ!!!!!!!」
泣きわめきながら拘束される犯人を見下ろし、警官Cは唇を歪めて笑う。
警官C「ハ…ハハハハハ…
見たか…
ざまあみろ!!!
もう誰にも、僕の事を馬鹿になんかさせないぞ!!!!
ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!!!!!!」
その場に犯人の泣き叫ぶ声と、警官Cの笑い声がこだまする。探偵は後味の悪さを感じながら、事件の幕切れを見送った。
警官A「あーあ」
警官B「こいつ、ホントに撃ちやがったよ」
警部「こりゃ、始末書だな」
【終】
探偵SS【ミステリーギャグ短編集】 原田一耕一 @haradaiti
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。探偵SS【ミステリーギャグ短編集】の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます