追いつめられた犯人 後編
探偵に追いつめられた犯人が、自ら命を断とうとしていた。警部たちの説得虚しく、犯人は自分の喉元に突きつけたナイフに力をこめる。
犯人「…もういい。
話はここまでだ。
俺は、ここで死を選ぶ。
自らの罪を命でもって償うため。
全ての悲しみと憎しみの連鎖を断ち切り…
この事件に、真の終止符を打つために…!!」
犯人は、決意を固めた目をしていた。ちょっと自分に酔ってる感もある。そんな犯人に対し、探偵は言う。
探偵「確かに。
古今東西、数々のミステリーやサスペンスの世界で、自ら死を選ぶ犯人がいます。
そうした方が惨めったらしく捕まるより、何か潔くて、より深く罪を受け止めているかのような印象を与える事ができます。
それでいて、生きていれば受けたであろう取り調べや裁判、その後の刑務所暮らし。本来果たすべき、反省、謝罪、更生…そういった一切の責任から逃れる事ができるというわけです」
警部「何て卑怯な…」
犯人「うるせえ!!!!」
犯人が、声を荒らげる。
犯人「このまま犯罪者として、世間から非難と好奇の目を向けられ…
遺族からは恨まれ続け…謝罪し続け…
長い監獄生活を耐えようやく出られても、前科というハンデを背負って世間から隠れるように慎ましく生きていく…
そんな人生…
何が楽しいんだ!!!!!」
警部「自分で蒔いた種だろ」
警官「この期に及んで、楽しい人生望んでんのかよ」
犯人は、周りを囲む警官、そして警部と探偵を見回しながら不敵に笑みを浮かべた。
犯人「じゃあな…
あいにくだが俺はお前らに捕まる前に、あの世におさらばさせてもらうぜ…
あばよ、名探偵…!」
そう言うと同時に、ナイフの切っ先が犯人の喉に3ミリほど食い込んだ。
犯人「いっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっってええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああうああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええおえええええええええええええええええええええええええ☆ええええええええ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~っっっっっっっつっっっっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!♪!!!!!!!!!!!!?!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
絶叫の後、ナイフが手からこぼれ落ちた。犯人は自らの喉を指で触る。
犯人「あ。血ー出た」
薄っすら血のついた指を、周りに見せる犯人。
犯人「ちーでたよ。ほら」
警部「今だ、確保!!!!!!」
警部の号令で、警官たちが一斉に犯人に飛びかかる。
犯人「いや、ちーでたって!!!
血ー出てるから!!
ちー!!!!!!!!」
警官A「知るか!!」
警官B「ツバつけときゃ、治るわそんなん!!!」
警官たちは、わめき散らす犯人に構わず取り押さえる。
犯人「救急車呼んでよ、救急車!!
ちーでてるから、もう!!!
きゅーきゅーしゃ呼んでって!!!!
きゅーーーーーーーーーーーーーーーーーーきゅーーーーーーーーーーーーーーーーーーしゃ~~~~~~~~~~~~~~~~~~あああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
そう泣き叫びながら連行されていく犯人を、憐れむような目で探偵は見送った。
【終】
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