戦争の詩

真夏の窓は濃い

カーテンの忘れた光を散らせ

ぼくらは午後の眠気をのみこみ

右手をうごかす


戦争の詩をかけ

戦争の詩をかけ、と先生はいった

その悲惨 情緒 あるいは美化

経済と生活のすべてから かけ


ぼくはいった

戦争の詩は詩ではない

戦争の詩は戦争である


小鳥の詩は小鳥である

恋愛の詩は恋愛のかがやき

運動の詩は筋肉の躍動 そして

戦争の詩は戦争である


ぬるい学習机のきれはしが

照らされ 小指をひたし

カリキュラムを授け 感性を磨かせる

ぼくらのこころになにごとかを起こそうと


詩とは手段ではない

あらゆる目的でもない

詩とは詩であり

小鳥の詩をかくなら 小鳥になることである


詩をかくなら

恋愛をせよ 運動をせよ

戦争の詩をかくなら

戦争をせよ 一刻もはやく


小鳥はしに 少女はもだえ

少年はうたれ 運動はころした

そのどこに われわれはいたか?

そのどこに われわれの言葉はあったか?


戦争の詩をかけ、と先生はいった

ぼくはいった

ぼくたちは戦争をしらない

ぼくたちは戦争をしらない

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