第11話 沈みゆく夕陽に向かって

 バロールとの死闘は難を極めたが、なんとかドレイクとニクスの二人で倒すことができた。酔いどれドワーフと激悪エルフもヨードの殺虫剤攻撃で駆逐することができた。魔物たちは殲滅せんめつされ、王国に平和が訪れた。しかし、アウドムラ国王はバロールの熱視線攻撃に倒れ、そのまま帰らぬ人となってしまった。


 その後、アウドムラの国王にはニクスが就任した。


 金のかぶとを被ったニクスが玉座に座って言っている。


「アルラウネ公国とは早期に和解を締結する。もう戦いは終わりだ! これからは筋トレだ。我が民よ、体をきたえよ! これから戦う相手は重力だ!」


 その様子を微笑ほほえんで見ていたドレイクは、群衆の後ろから手を振ってニクスに別れを告げると、ヨードと共に港へと向かった。


 大勢の民が二人の勇者を見送った。その中には草原で薬草を摘んでいた金髪の女もいた。彼女を見つけたドレイクはホッと胸を撫で下ろし、船上から手を振った。


 感謝を込めて手を振る民たちに汽笛で応えた後、希望の帆船は出港する。


 アルラウネ公国に向かう船の上で、ドレイクとヨードは大海原を見ながら互いの健闘をたたえ合った。


「やったな、ヨード。これで、戦争は終わりだ」


「そうですね。これから平和が長く続けばいいのですが……」


「魔物どもは、近頃我が国でも多く出没している。いずれ両国で協力して戦わねばならない時がくるかもな」


「そうですか。まったく、いつになったら休めるのやら」


 少し考えていたドレイクは、首を横に振った。


「いや、違うな。魔物どもは我々人間が争う醜い心が呼び寄せているに違いない。だとすると、もう奴らが国を襲うことは無いかもしれない。アルラウネ公国もアウドムラ王国も」


「そうなると、ありがたいですね。そう祈りましょう」


 ドレイクは静かに頷いてから、沈みゆく夕陽を見つめた。彼の美しい白髪が黄金色に染まる。


 すると、海の中から船の中に白い物が飛び込んできた。ひろしだった。ブルルッと身震いして毛から海水を飛ばしたひろしは、口に女性用の下着を咥えている。今度の下着は虹色だ。しかも何着も重ねて咥えていた。


 ドレイクとヨードは恐る恐る船尾の方を振り向いた。


 向こうから鬼の形相をした何尾ものマーメイドたちが泳いで追いかけてきていた。


 二人を乗せた船は水平線の向こうに沈んでいく太陽を追うように、西へと進んでいった。後を追って泳ぐ海の魔物たちの影をひいて。


 了

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ひろしのご主人様は白髪の美青年騎士で、その従者と共に異国の地を旅していると美女に会ったり下着をゲットしたり魔獣たちに襲われたりして、マッチョと友になり、驚愕の事実が判明する冒険・略して『ひろしの冒険』 淀川 大 @Hiroshi-Yodokawa

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