51、仲間選びイベント発生!
こちらのミッションが終わり、俺はプライドの手助けに玄関へと向かったがすでに戦闘は終わっていたらしい。
俺が1人倒した時間で、彼女はとっくに複数人を相手にして戦闘を終了していたようだ。
「弱い!弱すぎる!エリィィィトなわたしに勝てないのは当然としてもこんなにも他の隊の騎士は動きも技術も練度もない!あれは騎士か!?騎士の皮を被ったゴロツキじゃないのか!?」
玄関にいた騎士全員を1人で追っ払ったプライドは失望の気持ちを垂れ流しにしていた。
そりゃあ、そうだよ。
プライドは終盤近くに登場する敵役。
こんな序盤の名ばかりの騎士相手に負けるはずがない。
まだまだ(騎士として)若いプライドだが、やはりエリィィィトは熟練の騎士よりよっぽど大きな功績を残せるのだから。
あぁ、気高いよプライド!
好き、好き、好き!
大好きプライド様!
「あぁら、野蛮なこと」
「なにをぅ!」
「ちょ、ちょっと!?というかいつの間に!?」
サファイア家のお姉様はしばらく動けないだろうと、彼女の部屋に置いてきたのだが知らない内に俺の後ろを付いて来ていたらしくいつもの憎まれ口を叩く彼女が復活していた。
「さっき野蛮人の暴言を取り消すと言ったばかりじゃありませんか!?」
「わたくしは坊やに言っただけで、そこの化け物野蛮人の女へ取り消したつもりはないことよ」
「なんだと!?助けられて偉そうに!」
「褒めてつかわす。E級冒険者」
「エリィィィトを馬鹿にするか……。口悪女っ!」
「だぁぁぁ!プライドもお姉様も喧嘩はやめてください!とりあえず全員集まりましょう!」
プライドもお姉様もお互いがプライドが高くて相性が最悪なようだ。
それこそ磁石のS極とS極が反発し合うようなもの。
磁石のS極のSはサディストのSである。
「そうね。お父様、お母様、弟に妹を集めるわ。あなたたちも1人のマスコットキャラクターを連れてお父様の部屋に集まりなさい。良いわね?」
プライドにきつく当たるとお姉様は背中を向けて階段を上に登っていく。
「べー!格好付けている時に階段から落ちて大怪我しろ」とプライドは小声であっかんべーとしている。
エリィィィト様の子供みたいなムーブにはギャップがあって参るね。
お姉様の姿が見えなくなると、「そういえば……」と言いながらプライドはキョロキョロと玄関周りを見回す。
「マスコットキャラクター?そういえばリディの姿が無いな?」
「そうなんだよね……。とりあえず部屋に戻るか」
「そうだな……」
それから無駄に広い館を歩きまわると、お姉様の部屋の近くの俺たちに宛がわれた部屋に付く。
「リディ?」とプライドが声をかけながら部屋に入っていく。
「いだいですぅぅぅぅ……。捻ったところ絶対にアザになるぅぅぅ……。痛いよぉぉぉぉぉ……」
リディはまだベッドで飛びはねながら捻らせた脚に痛くて悶絶していたようだ。
いまだに涙目になり、ベッドから立ち上がれないでいた。
「なにやってんだこの馬鹿は?」
「馬鹿じゃないですぅぅ……。リディですぅぅぅぅ……」
「はぁぁ……。呆れた……。ユキ、回復してやれ」
「わかった……。『ヒール』」
悶絶し、ベッドから起き上がれなくなっていたリディを回復させる。
まったく……。
戦闘をしてきた自分とプライドに回復せず、ベッドで怪我したリディを癒す羽目になるとは想像もしていなかった。
「ふふっ。でも、まぁ言われてみればこいつはマスコットだな」
「確かに。マスコットキャラクターって言われればしっくり来ますね」
「な、なんですかマスコットキャラクターって?」
「こっちの話だ」
「?」
年上の女性のリディに対してマスコットキャラクターという表現は失礼な気がするが、リディだからいっかとなる。
「よし。とりあえず全員揃いましたね」
「リディがここにいるせいで無駄な移動が増えたじゃないか」
「どこ行くんですか?」
「サファイア家当主の部屋にね。行く用事が出来たの……」
リディを連れた3人の『プライドを愛で隊』フルメンバーが揃い、お姉様の指示された通りに当主様の部屋に行く。
彼の部屋を開けると、変なにおいが鼻に付く。
「うっ……。血のにおいだ……」
リディが顔を歪ませると、「すまんすまん」というミサトちゃんたちのお父さんが部屋の机で俺たちを待っていたように座っていた。
「私の魔法で数人騎士を殺した。まったく……。こんな雑兵でサファイア家を襲うとは片腹痛い」
夕飯時はとても優しそうなサファイア家の当主のおっさんであったが、今ばかりは頬に血を付けてとても貫禄がある。
「サンドラが騎士に襲われそうになったが、家族全員無事で安心したよ。感謝するよユキ君にプライドさん」
「い、いえ……」
「降りかかった火の粉を払ったまでです」
「ねぇ?ボクは?ボクは?」
サファイア家の当主はお礼を言いながら頭を下げる。
彼の報告通りに、側には夫人がいた。
その周りにお姉様、弟君、ミサトちゃんの3人が立っていた。
そういえばお姉様の名前サンドラって名前だったな。
因みに弟君の名前は…………、いや思い出せないわけじゃないが関係ないから考えるのをやめよう。
「我が家が襲われたのはおそらく『サファイアの証』だろう。それに、ユキ君はエメラルド家の当主とか?」
「は、はい。我が家にも騎士の襲撃があり『エメラルドの証』を持ち歩きながら旅をしています」
「そうか……。ならば、ユキ君よ。我が家の『サファイアの証』も一緒に守護してくれんかの?」
「え?」
ゲームの展開では、彼は生き残るものの『サファイアの証』は奪われる。
その展開が変わったのも、我がチームの姫様であるプライドが玄関で暴れたことにより増援を防いだからなのは言うまでもない。
「その変わりじゃが、私の子供の内1人を君たちの仲間にしたい」
「お、お父様!?」
「父上!?」
「仲間……?」
その切り出しに子供たち3人は驚愕の声を上げる。
が、これは予定調和である。
これからこの姉、弟、妹の3人か、または誰も選ばないという選択肢が存在する。
そして、選んだ者がパーティーの1人として仲間になるのだ。
「……ゴクリ」
このイベントが起きたら、俺はとっくに仲間にする者を決めていたのであった。
──ミサトちゃん一択でしょ。
そんな逸る気持ちを堪えつつ、拳を作り慌てないように心を落ち着かせていく。
死亡フラグに愛された敵組織の女幹部が大好き過ぎて、俺は『結婚したい!』と告白していた。─女を捨てた悪役の女騎士を乙女に変えていきます!─ 桜祭 @sakuramaturi
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