神に問うた一手、その先に新たな人生があった

「一手で世界は変わる」――そう信じて、少年はすべてを懸けた。

祖父に教わった将棋に心を奪われ、全国準優勝を経て奨励会入り。
プロ棋士の夢を追いかける内藤哲也の青春は、ただひとつの盤上に注がれていた。

しかし、年齢制限、昇段の壁、遠ざかる恋人と家族、重くのしかかる「天才」の影。
誰もが見えないふりをした『敗者の現実』が、静かに彼の人生を蝕んでいく。

最終局、運命を賭けた一手を前に、彼は神に祈り、選んだ。
勝つか、終わるか。もう後戻りはできない。

だが、人生は終わらなかった。
将棋を失ってなお、盤上の教えが導いたものとは?

これは、棋士になれなかった者の、その後の物語。
静かで、激しく、そして限りなく人間らしい、再生の記録。

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