第2話出会い2

誰かが僕の目の前に来た。

涙を袖で拭いながらその人を見るとさっきのコスプレ男だった。


「うぐっ…一体何しに来たんですかっ!!帰って下さいよっ!!」


「情けない顔だ。男がそう簡単に泣くな。お前を手助けしに来たというのに。先程の飯の礼だ。」


手助け?

このコスプレ男が言っている意味がよくわからない。


「おいっそこの者っ。早く頭を下げて御屋形様に感謝せいっ。」


声の方向を見るとコスプレ男の後ろに派手な着物を着たおじいちゃんがいた。


「早く頭を下げいと申しておるだろう。この方をどなたと心得ているのだ。織田家当主であられる織田信長様であらせられるぞ。」


「……はぁ…。」


このおじいちゃんもコスプレか?

勘弁してくれよ。


「何だ!!その返事は!!」


おじいちゃんに頭を掴まれたと思ったら頭を床に押し付けられた。

頭が床にこすれて凄く痛い。


「痛いっ!痛いって!!」


おじいちゃんなのに何だこの力。

頭を上げたくても上げれない。


「猿、下がっておれ。」


「ははっ。」


頭から手が離れる。

痛みから解放され頭を上げると偉そうに仁王立ちするコスプレ男。


「ここは飯屋だったな。まずは料理人からか…。猿お前料理は出来たか?」


「はい、一通りは。しかしわしよりも適任が一人。」


コスプレ男達は勝手に話を進め始める。


「ちょっと待って下さいよ!ただの料理じゃダメですよ。フランス料理じゃなきゃ。」


って僕は何を言ってるんだ。

でもこのままじゃ和食を作りそうな人が来てしまいそうでつい口を出してしまった。


「ふら…?要するに南蛮料理の事じゃな。まぁ、あやつなら何とか出来ると思われます。」


「そいつは誰だ?」


「奥州の伊達政宗でございます。」


伊達政宗?

テレビとかで聞いた事はあるけどその人も武将じゃなかったけ。


「伊達?あぁ、輝宗の倅か。料理人は決まりだな。これで飯は出せるだろ。小僧、後必要な奴はいるか?」


「今日は二人分だけなので多分何とかなると思いますけど。でも料理する人もう一人いてもいいかも…。一人じゃ流石に大変かもしれないし…。」


小さいレストランではシェフが全てこなす店もある。

だけどもう一人いた方が今から来る伊達政宗と言う人も気が楽だろう。

厨房はいつも戦争だから。


「っていつの間にやる気になってるんだ…。」


流されるままの自分が嫌になってくる。

コスプレした男達は何か話した後、おじいちゃんの方は何処かに行ってしまった。

この偉そうなコスプレ男は一向に帰ろうとしない。

心の中で早く帰ってくれと祈る。

暫くするとおじいちゃんと眼帯をしたおじさんがやって来た。


「えっ何?今度は中二病を引きずたおじさん?もう勘弁してくれ…。」


本当に連れて来ると思わなかった。

僕があっけに取られているとコスプレ男と眼帯おじさんが時代劇風挨拶を始めた。


「お初にお目にかかります。伊達政宗と申します。生前我が父がお世話になり申した。」


「輝宗殿から献上された鷹は見事だったのを覚えている。輝宗殿はあちらでも息災か?」


「はい、母と仲睦まじく暮らしております。」


「それは何よりだ。」


もはや時代劇を見てる気分だ。

この眼帯おじさんの恰好も和装だ。

今度はおじいちゃんの方が眼帯おじさんと話始めた。


「政宗、料理中に呼び出して悪かったな。」


「いえ、いえ。何やら面白そうでしたので。私に料理をして欲しいとか?」


「その通りだ。だがただの料理ではないぞ。南蛮料理だ。」


違う違う。

正確に言うならフランス料理だ。

関わらないようにしようとしていたのについ訂正してしまう。


「フランス料理です。」


この和装した眼帯おじさんが作れるとは思えない。

眼帯おじさんと目が合う。


「この方は?」


僕が答える前におじいちゃんが答える。


「このわっぱはこの飯屋の主人らしい。」


「ほう。私は伊達政宗と申す。今日はよろしく頼む。」


何か今日まともに挨拶されたような気がする。

俺もつられて挨拶をしてしまう。


「初めまして。僕の名前は佐々木ささき 一はじめです。」


普通の挨拶に少し感動してしまう。

何だか妙に安心してしまい、また涙が出そうになったが堪えた。

誤魔化すように質問をする。


「あれ?もう一人来るんじゃなかったんですか?」


「その事か…。わしと政宗で作る。」


おじいちゃんが自信満々に言う。

本当に不安しかないな。

だけど…色々悩んでいる自分が馬鹿らしくなってきた。


「あぁぁぁあぁぁあ!!もうどうにでもなれ!!!」


「やっと腹が座ったか小僧。」


「さっきよりもいい顔になったのう。」


「若人はこれぐらい気が強い方がいい。」


僕は重い腰を上げて、勢いよく立った。


「わかりましたよ。やりますよ。やってやりますよ。やればいいんでしょっ。オープンしましょう!!」




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