第8話フランス料理6

僕は急いで織田さんの後を追うがそれは遅かった。


「お待たせいたした。野菜の葉っぱ巻きです。」


「ありがとう。」


「まぁ、これ金箔?」


はぁ~、何もない事を祈る。

てっ、あぁ!!

ワインまだだよっ!!

急いでワインがある倉庫に行こうとしたら織田さんが僕を呼び止める。


「おい、どこに行く。」


「何処って…ワインを取りに倉庫へ…。」


「ふんっ、それならもう選んで二人に注いできた。」


「えぇ~!!いつの間に…。」


二人のテーブルを見ると確かにワインが置いてあった。

ワインを美味しく飲んでいる様子から大丈夫だと思うんだけど…。

って…二人とも前菜食べ終わりそうじゃないか。


「次はスープを持っていかないとっ。」


今度はメニューを勝手に変更してない事を祈る。

だがその悪い予感は的中した。


「何ですかコレは?!メニューと全く違う料理じゃないですかっ!」


どうしてミネストローネが真っ白いスープになっているのか訳がわからない。

悪気なさそうに伊達さんが言う。


「そこに良い芋があったから使わせて貰った。」


「だから勝手に…。」


伊達さんが使った芋というのは恐らくジャガイモの事だろう。

という事はこのスープはジャガイモのポタージュか?


「この貝はあの男女に相応しかろう。急いで用意した甲斐があったわい。」


「貝?もう~勘弁してくださいよ。」


「仕方ないのう~。ほれ。」


豊臣さんはまた金箔をポタージュの真ん中に置いた。

だから何でそうなるんだよ。

彼らに振り回されてばっかりだけど、次の料理はそうもいかない。


「次の料理材料は絶対に変えないで下さいよっ!もし変えたら僕が作って出しますからっ!」


僕はそう言って厨房を出た。

そして息を整えてから、二人にスープを出す。


「ジャガイモのポタージュです。」


愛川さんは料理を見ると嬉しそうに微笑んだ。


「わぁ、真っ白。素敵~。」


「う~ん。」


健司君は何か言いたげで、ポタージュをじっと見て考え込んでいた。

その様子に愛川さんが可愛く口を尖らせる。


「も~う、食事の時ぐらい何も考えないで楽しんだらいいのに。」


「ごめん、ごめん。でもお前もこの間花渡した時、仕事の事考えていただろ?」


「私はいいの。」


会話を聞いて確信した。

この二人はいずれ結婚するだろう…と。

少し離れた所で笑い合う二人を見ていると織田さんが隣に立った。


「諦めるのはまだ早い…。」


「えっ…?」


「惚れてるのだろう。あの女に。」


「はぁっ、ふぇっ、そんな事ないですよっ!べっ別に好きとかそんなんじゃないですよっ!ってあれ?織田さん?」


隣にいたはずの織田さんがいない!!

僕とさっき話してたのに…。


織田さんはというとワインを注ぎに二人のところにいた。

何か談笑しているようだ。

先程の話をしているのではないかと不安になり急いで二人の所に行く。


「あっ一(はじめ)君、いいところに。」


「なっ、何?どうかした?」

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