第9話フランス料理7
愛川さんに声を掛けられドキリとする。
「このスープすっごく素敵ね。健司が言うまで気が付かなかったわ。」
「え…?」
意味?ただのジャガイモのポタージュじゃないのか?
二人の皿を見ると、少し残っているスープの真ん中には貝が置いてあった。
皿と彼らを交互に見ながら考えるが意味なんて全く分からない。
「はまぐりには二枚の殻がピッタリくっつくから夫婦円満っていう意味があるって俺が教えたんだ。」
健司に説明されて驚く。
ジャガイモのポタージュの中に貝が入っている何て知らなかった。
そしてその貝が何かも、食材の意味も知らなかった。
「っよく、わかったねっ。」
「一応レストランのオーナやっているからね。それに…この貝殻さ。俺のは裏で麗奈のは表の貝殻だろう。気付いけって言ってるもんだろう?」
僕は何もわからなかったよ。
やっぱり健司君はすごいなぁ。
僕はただ笑顔を顔に貼り付けた。
「この貝殻持って帰っちゃおうかしら~。な~んてね。」
愛川さんはお茶目に笑った。
彼女の笑顔はいつも明るく綺麗だ。
空になった皿を下げながら僕も彼女に笑顔を返した。
厨房に入ると伊達さんと豊臣さんが僕を見る。
「なっなんですか!」
豊臣さんは僕の顔をまじまじと見てため息をつく。
「はぁ~なんじゃ、その顔は~。」
「僕の顔が何ですか…。」
変な事で突っかかって来ないで欲しい。
伊達さんも僕の顔を見たままだ。
「伊達さんまで…。そんなに僕の顔に何か?」
「言った通り作ったぞ。」
そう言って伊達さんが皿を置いた。
「サーモンのポワレだ。」
四角いサーモンの上にはレモン。
その周りには白と緑の別々のソースがサーモンを囲むようにしてかけれれていた。
「ありがとうございます…。」
初めて僕が指示した料理が出て来た。
僕が感動していると、豊臣さんが懐から何か取り出そうとしていたのですぐに皿を持って行った。
これだけは二人が来るって決まってから絶対に出そうと決めていたのだ。
「サーモンのポワレと二種のベシャメルソースです。」
「私の大好物ね!」
「俺によくサーモンの料理作らせてたもんな。」
「違うわ。あなたの料理練習に付き合ってあげてたの。」
サーモンは二人が付き合うきっかけを作った食材。
そして健司君の練習には僕も多々巻き込まれた。
「僕もあの時、健司君の料理よく食べてた。あの時から二人とも仲良かったもんね。」
愛川さんは眉間に可愛い皺を浮かべた。
「えぇ~、どちらかと言えば喧嘩してばかりだったわよね。」
「それはお前が俺の料理不味いって言うから。」
「でも上達したでしょ?」
「サーモンの料理だけな。」
健司君は大学時代シェフを目指していたが、今はレストランを仕切るオーナーをやっている。
だから忙しくて今は料理を作っていないんだとか…。
あの時の料理すごく美味しかったのにな。
「じゃあ、ごゆっくり。」
ぶしょーレストロン 好葉 @konoha00001111
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