第7話フランス料理5
健司君が驚く。
無理もない僕も驚いた。
「なんだホールスタッフもう一人いたんだ。安心したよ。ちょっと気になる所もあるけど。」
健司君はチラリと織田さんのちょんまげを見た。
「ははは~。まぁね。ちょっと、織田さん。こっちに来てください。」
僕は織田さんの腕を引っ張って健司君達から見えない所に連れて来る。
勝手にあれこれされても困る。
僕には僕のやり方があるのだ。
「手伝って貰って言いにくいんですが、あまり動かないで下さい。」
「………。」
無言な織田さんを置いて、食中酒を聞きに行く。
「ごめん、お待たせ。食事に合わせるワインはどうする?」
「それは一(はじめ)に任せるよ。俺達はメニューを知らないわけだからね。」
「素敵なワイン期待してるわ。」
「う…うん。」
食事に合うワインか…。
お酒あんまり好きじゃないから自信を持って進められないんだよね。
「はぁ…ワインかぁ。」
あっ!パンも持って行かないと!
忘れてた!
パンは焼ける人がいなかったので近くのパン屋さんから買ってきたものを使う。
そのパンを二人に無事に配り終えてっと、後は…ワインかぁ。
「あっ…その前に厨房の様子も見ないと。」
厨房の様子を見に行くと二人とも順調そうだ。
「伊達さん、豊臣さん、次は前菜ですよ。」
「今、出来た所じゃ。ほれ。」
豊臣さんは僕に皿を見せてくれた。
三角のロールキャベツ?
僕は野菜ゼリーを作って欲しいって言ったんだはずだ。
「料理変わってますよね?」
伊達さんは腕を動かしながら背中で話す。
「ちまきを参考にしてみたんだ。。心配しなくても信長様にはお伝えした。」
ちまきって笹に包んだご飯だよなぁ。
そんな事よりも織田さんに言うより僕に言うのが先でしょ。
豊臣さんが僕を睨む。
「なんじゃ、文句があるのか~?」
「文句もなにも…。」
「文句は食うてからじゃ。一皿余分に作っておる。食え。」
勝手なメニュー変更で僕が怒りたいのに。
僕は取り合えずこのロールキャベツを食べてみることにした。
ナイフでロールキャベツを切ると中は肉ではなかった。
「これ…中身野菜ゼリーだ。」
キャベツに包まれた野菜の色彩が際立っている。
驚きつつ皿のまわりに飾られた緑色のソースを付けて口に運んだ。
「どうじゃ?」
豊臣さんがにやりと笑う。
昆布の出汁のゼリーが野菜との相性も緑のアボカドソースも美味しい。
「…確かに美味しいですけど…、ですけど…。」
僕が何も言えずにいると、豊臣さんがロールキャベツの上にキラリと光るものをおく。
「仕方ないのう…これでよいじゃろ。」
豊臣さんが自信満々そうな顔をする。
どうやら僕が料理の見た目に不満を抱いていると思ったらしい。
「えっ…いや…。そういう事じゃなくて…。」
この人達勝手すぎるよ!!
心の中でそう叫ぶ。
あぁ、もうワインも選ばなくちゃいけないっていうのに!!
僕が頭を抱えていると厨房に織田さんが入って来た。
「猿、前菜はこれか?」
「はい、野菜ゼリーの葉っぱ包みでございます。」
前菜を無言で見てから、無言で持って行った。
その間張り詰めた空気が漂い誰も一言も発さなかった。
だから僕は出て行った事にホッとしていて織田さんが持って行くのを止めるのを忘れていた。
「…っしまったっ!」
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