第6話フランス料理4

メニューを書き直した後はテーブルセッティング。

僕がテーブルセッティングしている中、織田さんは僕の部屋から出て来ない。


「まぁ、いいか。見られていても緊張するし。」


テーブルセッティングが終わり、厨房を覗くと何とかフランス料理ぽい物は出来ているようだ。

そろそろ健司君が来る時間に迫って来た。


「織田さんは…呼ばなくてもいいか。」


僕一人でもお客様の相手は出来る。

人数も少ないし、織田さん怖いし。

それにホールの仕事は料理の事やお酒にも詳しくないといけないから織田さんには難しいだろう。


「きっと大丈夫!」


深呼吸を一つした時、扉が開く。

健司(けんじ)君はグレーのスーツ、愛川(あいかわ)さんは落ち着いたピンク色のドレスで大人ぽく綺麗になっていた。

お似合いの二人だ。


「一(はじめ)オープンおめでとう!でもいいのかな、俺達が最初のお客なんて。」


健司君は大きな花束を僕に渡す。

その花束に健司君のセンスの良さが垣間見える。


「健司君には色々お世話になったし、全然。むしろ光栄だよ。お花ありがとうね。」


「あぁ、花束作ったの麗奈(れな)だから。俺は包み紙だけ。」


えっ愛川さんが?

驚きながらお礼を言う。


「愛川さん、綺麗な花ありがとう。」


「ううん、一(はじめ)君もオープンおめでとう。私も今年からお花屋さんオープンしたの。だからお花が必要になったらいつでも言って。一(はじめ)君の為だったらすぐに用意するから。」


「ありがとう。今度是非お願いするよ。」


彼女の言葉一つ一つが嬉しい。


「高額請求されないように気をつけろよ。」


「一(はじめ)君にそんな事しません。それに私の店はそんなお店じゃありません。」


二人の会話は幸せな香りがした。


「じゃあ、席に案内するよ。」


「あぁ、頼むよ。」


「楽しみね。」


席に案内した後に食前酒を聞く。

アペリティフが載ったメニューを二人に渡す。


「アペリティフはどうする?」


「そうだなぁ。俺はシェリーで。」


「私はそうね…私はシェリーのカクテルにしようかな。」


しまった…。

食前酒のメニューからカクテルを消すのを忘れていた。


「ごめん。まだ僕のお店ソムリエもバーテンダーも居なくて…。」


「そうだったのね。じゃあ、健司と一緒にしようかな。」


「本当にごめん。」


最初からやらかしてしまった。

切り替えて食前酒のシェリーをグラスに注ぎ、テーブルに置く。


「これ、一応メニュー。今日はコース料理だよね。」


料理のメニューを渡すが直ぐに閉じて僕の胸に戻って来る。


「メニューはいいよ。その方が楽しいだろ?」


「じゃあ、私もそうしよっかな。何だか楽しそう。」


メニュー書き換えた意味無かったな。

え~と、次はアミューズだよね。

出来てるかな…。

不安に思いながらアミューズを取りに行こうとした時だった。


「お待たせいたした。アミューズでございます。」


颯爽とアミューズを織田さんが置く。

どうしてここに…。

部屋にいたはずなのに。


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