第4話フランス料理2

冷蔵庫も確認してみるが一つ材料が見当たらない。


「真鯛が無い!」


先程材料を説明する時、真鯛は皆知っていたから説明を省いていた。

だから気付かなかったんだ。


「よもやと思ったが…。やはり。」


「ど…どうしよう…。今から変更?それとも今から買ってくる?でももう時間がないし…。どうしよ~。」


「落ち着け!!」


コスプレ男が叫ぶ。

その声にビクっと体が震えた。


「で…でも…。」


「御屋形様の言う通りじゃ。落ち着てよう考えよ。騒いだところで何も変わらぬ。」


おじいちゃんはいたって冷静だ。

考えろって言っても…今から買ってくるのは無理だからやっぱりメニュー変更しかない。

僕は急いで祖父の部屋に行き、あるメモ帳を持って来た。

おじいちゃんはまじまじとメモ帳を見る。


「随分小さな本だな。」


「本じゃありません。これは…僕の祖父の料理が書いているメモ帳です。今日の料理もここから選びました。鮭を使った料理で作れそうなものありますか?」


今、ある魚は前菜用のサーモンしかない。

ならその魚を魚料理に使うしか他に方法はないと思った。

前菜と魚料理で同じ魚になってしまうが仕方ない。


「どうじゃ?政宗?」


眼帯おじさんが答える前にコスプレ男がメモ帳の料理を指差す。


「この料理にしろ。」


だがそれは魚料理ではなかった。

前菜用の色んな野菜をゼラチンで固めた料理だ。


「なるほど…。承知しました。」


「さすが御屋形様じゃ~!!」


眼帯おじさんとおじいちゃんは納得しているが僕は納得できない。


「待って下さい!その料理は前菜用の野菜料理ですよ!魚料理じゃない!」


「ふん、そこまでわかっていれば答えは自ずと出る。」


「???」


もうこの人が何を考えているか理解出来ない。

首を傾げていると、おじいちゃんが教えてくれた。


「まだまだよのう~わっぱ。御屋形様は前菜料理と魚料理を変えよっと言うておるのじゃ。」


「もし仮に前菜料理はその野菜ゼリーだとしても魚料理はどうするんですか?」


「はぁ~、そこまで出ててまだわからぬか…。」


おじいさんが頭を抱える。

そんなの言ってくれないとわからない。


「魚料理は魚だけを変えれば解決するであろう。」


「…魚料理は調理法だけ変えないって事ですか?」


「そのだと言っておるであろう。やれ、やれ。」


そう言う事だったのか。

僕が納得していると眼帯おじさんが教えてくれる。


「信長様はこのままでは鮭料理が二つになってしまう事を危惧したのだろう。店主殿はそれでもいいと考えていたであろうがな。」


確かに僕は鮭料理が二つになっても仕方ないと思っていた。

だって…材料が無いし、見るからにこの人達はフランス料理は初めてだからメニュー変更は少ない方がいいと考えていたから。


「最初に言ったはずだ。失敗は許さぬと。」


まだ諦めていなかったんだ。

諦めていたのは僕だけ…。

怖くて、苦手な人なのにかっこいいと思った。



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