明るければ明るいほど、影は長く伸びていく

 「因習村」というネットミームが生まれたのは、割合最近だと思います。
 古くは『八つ墓村』、平成以降の代表例としては『屍鬼』『ひぐらしのなく頃に』『TRICK』、最近ではディズニープラス限定ドラマ『ガンニバル』などで描かれてきたものですが、閉鎖的な土地や、そこに伝わる因習、血生臭い背景などがイメージの源流でしょうか。クトゥルフ神話で有名な『インスマスの影』も、イメージに沿う形かもしれません。

 本作はそういった「因習村」の系譜を組みつつ、あくまで令和に存在するものとして描かれています。いやいや、スマホもSNSも浸透した今、そんな変な因習が根付いているなんておかしいじゃないか……と思うのは至極当然ですが、だからこそ表面的には現代社会の中にある村の異質さが際立ちます。
 実際問題、気にしなければ、そこが因習村だとは気づけません。けれど読者である我々の目からは、どうしようもなくそこがおぞましい土地だと映る温度差に背筋が凍ります。

 また主人公の視点から物語は展開していきますが、そのモノローグもどこか病んだ不気味さを帯びています。
 因習、暮らしている人、不審な夫、不安定さを抱えた主人公……それぞれが独立した歯車となって、ほの暗い方へ、ほの暗い方へと進んでいきます。
 カラカラ、カラカラ。ひたり、ひたり。
 明るければ明るいほど、影は色濃く、長く伸びていきます。

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