第5話 UFO!

 会社の代表番号にも堺の携帯にも連絡はつかなかった。携帯への3度目の試みも空振りに終わったとき,肩を揺さぶられる。

「おい,見ろよ――」誠皇晋が天を仰ぎ,目を細めている。視線の先を辿れば,重層をなす濃霧の絶え間に,幾筋もの光線が認められる。セピア色の空に出現した流星群だった。

 流星の群れが分断され,群れの一団が歪な動線を描く。唐突にはねあがり,目まぐるしく回転したかと思えば,今度は急降下する――

「流れ星じゃない――」誠皇晋に腕を摑まれた。「おりてくるぞ!」

 急かされて大木の陰に身を隠す。衝撃と爆風の波に繰りかえし襲われ,堪えきれず飛ばされる。軋みを発して撓う木々にぶつかりながら,誠皇晋と絡みあい,かなりの距離を転がっていく。僕の安否を確かめてから,強烈な光を放射する樹海の一画めがけて誠皇晋が駆けだした。UFOなんだ!――僕の体も独りでに動いていた。

 誠皇晋の背中に衝突して足がとまる。姿勢を低め,光源の正体を求めて目を走らせる。

 森林の途切れた広大な平地に大小の円盤が複数機着陸していた。光線はやはりそれら円盤から放たれてくるのだった。円盤の外観は「お掃除ロボット」にも似ている。小型円盤が挙って上蓋部を帆立貝みたいにひらいていく。宇宙人襲来!――

 光帯のベールを突きやぶり登場したのは人間だ。1機につき2,3人は出てくる。人の姿に化けているのか……

 円盤からおりた人員が整然と隊列を組む傍らで,2機の大型円盤が側面部から2本の腕を生やすように円筒を突きだす。地上に到達した円筒の先端からトラックや乗用車が次々と走りでて,平地の果てのフェンス越しに見える古ぼけた建造物へと爆走していく。

 1台のリムジンが停車し,助手席からスーツ姿の男がおりて指示をくだすと,隊列が動きはじめる。車と同じ,建造物のある方角へ前進しているらしい。隊列の流れを眺めていた男が背を翻し,落陽の逆光を受ける頭部を傾け,懐からとりだしたものを耳にあてる。ひしゃげた太陽が建造物の裏に落ちた。

 星屑の降る空を斜めに見あげて携帯電話をかける男の容貌が捉えられた。同時にスラックスのポケットにいれたスマホが高らかに流行歌のリズムを刻んだ。

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