人類史、イン、冷蔵庫。

 主人公が冷蔵庫の扉を開けたら、「文明が発展していた」――。
 冒頭からして意味不明、かつ、読者を作中にグイッと引きずり込む、この思い切りのいい愉快な短編。
 冷静な主人公の視点で淡々と描かれるツッコミどころ満載の「文明興亡」に、読者はただただ呆気に取られながら、それでも勢いに任せて、目の前で繰り広げられるシュールな人類史を夢中で追いかけてしまいます。堪えきれない笑いとともに。
 たいしたことでも無さそうにサラリと書かれているものの、冷蔵庫の機能や収蔵された食品を存分に生かした科学的なアイデアには妙な説得力があり、思わず唸らされてしまいました。
 前述の書き出しのインパクトもさることながら、最後の一文が秀逸です。

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