とても、切ないけど、感動をありがとう

独創的なしっとりする世界観に涙を溢さずにはいられません。

今回の主人公はクロという忠義な子犬。
こうした作品を描いたら、上月さんの独壇場なのかも知れません。

冒頭からクロに成り代わり、犬の細やかな心情に心を打たれてしまう。托鉢な修行僧と物乞いで冬の山里を彷徨い歩く姿には、松本清張の代表作のワンシーンまで浮かんでくる。
きっと、主人公は重い十字架を背負う尼さんのやさしさが分かっていたのでしょう。

菩提樹となる年老いた桜には、人知れず美しい花びらが咲くことを願わざるを得ません。