呪われた橋

藍条森也

呪われた橋

 「ボクは愛の架け橋になる!」

 かのは子供の頃からの夢を叶え、『愛のメッセンジャー』となった。

 文字だけの手紙やメールでは物足りない。かと言って、自分で伝えるのは例え電話であっても気恥ずかしい。そんな『愛のメッセージ』を本人にかわって伝え、相手の耳元でささやくのがその仕事。

 かの人は愛の架け橋となるべく懸命にその仕事に取り組んだ。けれど――。

 なぜか、かの人の担当するカップルは必ず別れてしまう。

 愛を深めるどころか、破局へと追いやってしまう。

 付いたあだ名が『呪われた橋』だった。

 「君、この仕事、辞めた方がいいよ」

 「なんでですか⁉」

 「なんでって、その、ほら、ねえ……」

 「わかってます。ボクの担当した依頼主さんがみんな、別れてしまっているのは。でも、ボクはどうしても愛の架け橋になりたいんです。もっとがんばります。勉強します。ですから、このまま使ってください!」

 しかし、かの人が頑張ればがんばるほど担当するカップルは別れてしまう。

 その理由を本人だけが知らなかった。

 あまりにも美しすぎるその容姿が男女を問わず魅了してしまうことを。

 相手の耳元で愛のメッセージをささやくことで自分自身に恋させてしまうことを。

 頑張ればがんばるほどその必死さが魅力となって、カップルを破局に追いやってしまうことを。

 ついには『必ず別れさせてくれる呪われた橋』として有名になり、『別れたい相手』との連絡に使われるようになった。それでも、かの人はカップルの愛を深めようとメッセージを届けつづける。

 別れたい相手との連絡に利用されていることも知らずに。

 『呪われた橋』の伝説は――。

 終わらない。

     

                    完

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