深層心理滴る断崖氷壁。突き立ったアックスの向こうに視るのは羨望か狂気か
- ★★★ Excellent!!!
まずい携行食はカロリーの塊。クソ重いギアは命綱。
鍛え上げられ無駄のない、しなやかな肉体が魅せるのは、重力が無効化されたような幻想的所業。
誰もがあんな風に、と憧れるだろうか。
おそらく一部の人間は。多くは狂気を視るだろう。
ひとたび風が吹けば、それは肺を焼く瘴気を吸うに等しい。
滑落すれば、良くて即死、悪くて重症。
そんな場所にわざわざ潜る理由はなんだろうか。
周囲を黙らせるわかりやすい理由は、迷宮特産の極めて上質な素材や食材。
ここでは皆、迷宮に依存して暮らしている。
けれど、その深層に魅せられ潜る者――潜行者たちが心から求めるのは、そこにある地形そのもの。
それを越え、ただ、到達したというその事実のみ。
だがこれは、そんな猛者さえも狂気の沙汰として噂する一人の男の物語だ。
彼が最深層で出会ったのは、迷宮に棲む見目麗しい野獣だった。
彼らの間に紡がれた絆はどこかちぐはぐなのに、二人の粋はパズルのピースのように嵌り合う。
決して他者には理解し得ないだろう。
だからこそ、尊いのだ。
……ロマンは何処にある?
その迷宮に、あるいは深層に。