修羅の身を抱き海に沈んで。

 怪獣と宮沢賢治。
 一見つながらないように思える二者が、存在罪の寂しさで繋がり合う。
 奈々菜がなぜ怪獣になってしまったのか明示されることはありませんでしたが、それが却って結由夏との間に横たわる、離れて行ってしまうだけの潮流のような悲しみを感じさせる。
 怪獣の生まれの苦しみ。ふたりの女の断絶と絆。
 あえてはっきりと背景を描かれていない所に、抒情的な言葉が落とされることで、読者の私たちは空白に文章以上の感情を読み取ることもできる。

 怪獣と宮沢賢治というエキセントリックな組み合わせですが、読み手に怪獣の抒情的足跡を残す、素敵な作品。
 好きなひとには好きと言わせる、いい作品です。