巨大な管理都市で生活する、とある中年教師のお話。

　少し先の未来の日本を描いた近未来SFです。
　拡張現実などのガジェットや、人の精神活動（というか愛）の数値化など、いろいろとSFSFしい設定がてんこ盛りなところがとても魅力的。
　中でも『アイランド』と呼ばれる巨大な管理都市が特徴的というか、本作そのものの主軸となっている部分があります。

　架空の世界を描いたお話でありながら、現実の現代日本と地続きであるところも特色のひとつ。
　そう遠くない未来の、もしかしたらあり得るかもしれない光景を覗き見するような楽しみがあります。

　個人的に好きなのは、主人公が「なんの変哲もない普通の人」であるところ。
　現実とは異なる世界の、でも日常の中のドラマを描いた物語でした。

少し話が難しいですが､街中の描写などは幻想的で､文字で神秘的に再現されています。
読めば読むほど理解できる点が増え､最後には妙に納得できるお話です。

泣きました

　荒廃し忘れ去られた日本本土、巨大人工島と巨大な都市、数値化された愛のチャート。重厚なSFで作られた世界観が魅力的で、読者を未来世界へと連れて行ってくれる作品。
　システムと世界観はがっちりしたSFものでありつつも、現代の日本から地続きの世界であることが世相から読み取れる。そのことがまた、設定に厚みと説得力を持たせている。
　物語の主眼は思春期の揺れやすい心情に焦点が当てられており、読者の感傷をうまく引き出してくれるだろう。
　読めばわかる、面白い作品。