ガチャ652回目:助っ人合流
戦いの準備を整えた俺達は、拠点の屋上に併設されたヘリポートにて、彼女達総出で見送りをされていた。
「ショウタさん、ここに1週間分の食事が入っています」
「丹精込めてたっくさん作ったけど、それを食べきる前には帰って来てよね!」
「旦那様のご無事を、心から祈ってますわ」
「直接手助けできないのは歯がゆいですが、こちらの安全は私が守ります。ご主人様は敵の殲滅に専念ください」
「ああ、ありがとう」
これからスタンピードを終結させに行くといっても、彼女達は誰も悲観にくれたりはしていなかった。もちろん心配はされているが、不安を感じてはいない様子だった。
逆に直接的にスタンピードを経験していないカスミ達の方は、多少なりとも不安を感じているようだったが。
「お兄ちゃん、無事に戻って来てね。絶対だよっ!」
「おう、任せとけ。カスミ達も、しっかり頼むな」
「はい。兄上の懸念が現実にならぬよう、お務めを果たしてみせます」
「念のためシャルさんも手伝ってくれるみたいですから、お兄様は安心して戦ってくださいね」
「お兄様に神のご加護を」
「お兄さん、お土産よろしくね~」
「ああ。殲滅ついでに、美味そうな魚でも釣って帰って来るよ」
『プルプル!』
「お兄様、あたしはコアルームで何か情報がないか見ておくね☆」
「ああ。よろしく頼む」
今回の同時多発スタンピード。俺としては人為的な事件だと判断しているが、ただの嫌がらせにしてはちょっと大規模過ぎる。だからこれは陽動で、その隙に何か狙ってきてるんじゃないかと思うんだよな。
例えば、『楔システム』で既に制圧済みのダンジョンに『スタンピード誘発香』のような危険物質を持ち込んだりしないかとか、もしくはその近隣の未平定のダンジョンで使ってきたりとか。
だから、関西の第二エリアにはカスミ達に出向してもらい、関東の第一エリアは宝条院家と早乙女家に未平定ダンジョンを見張ってもらい、うちの彼女達4人には3つのダンジョンに対してすぐにアクセス可能なこの拠点で待機をしてもらうという作戦だ。
まあ、こんなのは懸念で済めばいいというのもあるが、今回立案させてもらった理由の大部分は、俺が討伐している間ただ手持無沙汰で待機しているというのは精神衛生上あまり良くないと判断したからだ。別の事をしていれば気が紛れるだろうし、これが彼女達のためになればいいんだけど。
正直、最初の4人は割とお腹が目立ってきたしな。肉体的にも精神的にも、安静にしてあげたいところなのだ。まあ、一般人と比べれば肉体の丈夫さには天地の差があるので、今まで通りダンジョンで戦っても問題ないとは思うんだけどね。気分の問題である。
「兄さんが無茶しないよう、僕が見張ってるから安心してくれ」
「ん。絶対に無茶はさせない」
「信用ないなぁ。皆を悲しませるようなことはしないぞ」
そうぼやいていると、ヘリの運転席で機器チェックをしていたシルヴィが顔を出した。
「そろそろ出発するよー」
「分かった。それじゃ行ってくる!」
「ん。行ってきます」
『いってらっしゃい!!』
◇◇◇◇◇◇◇◇
『ゴゴ~』
『ポ? ポポ』
『♪♪』
『キュイ~』
『プルプル』
みんなヘリに乗るのは初めてだからか、飛行機とは違う景色と感覚を楽しんでるな。まあ俺も初めてだけども。
「それで、なーんにも聞いてないけど、このままヘリで現地まで向かう感じ?」
「まさか。それだと速度が出ないし、それをするくらいなら僕とエンリルで飛んだ方が速いさ」
「けど、それだと大事な戦いの前に消耗する事になっちゃうから、このまま飛行場まで向かうわ。ほら、もうすぐ見えてくるはずよ」
シルヴィの視線の先には、長い滑走路に、家紋入りの飛行機が1つだけ存在していた。さすがにこんな状況下では普通の飛行機は欠便になるらしく、空港はガランとしていた。
その飛行機は、ボディーカラーが真っ黒で、形状も一般的な物とは違っていた。なんか後ろがパカッと開きそうだし、軍用の輸送機か何かだろうか?
ヘリから降りると見覚えのある女性達が出迎えてくれた。
「クリス。それに、義姉さん達も」
「お久しぶりですわ、ショウタ様。今回のスタンピード、わたくしも力をお貸ししたく思い、参上いたしました」
「それはありがたいけど……」
「ご安心ください。シャルはカスミ様達と行動を共にしていますし、テレサとマリーはショウタ様の本邸の護衛に回りましたわ。ですがわたくしはモンスターとの戦いにはお役に立てますが、街中での戦いには向いておりませんの。逆に水上であれば、わたくしの独壇場ですの。決して邪魔にはなりませんわ」
確かに、『水』の能力を使う上で海というフィールドは、彼女に最も有利な地形だろう。だが、俺にとっての第一目標は殲滅ではない。カギの入手だ。
だからボスの出現条件を乱されるわけにはいかないところなんだが……。
「エスはどう思う?」
「そうだね、クリスには悪いけど、サポートにのみ専念してくれるのなら、連れて行っても良いかもしれないね」
「エルキネス!? わたくしの実力は知っているでしょう? わたくしならスタンピードの片方を任せて下さっても、無事に殲滅ができますわよ」
「違うんだクリス。君が戦いに参加すると、それだけで兄さんの邪魔になるんだ」
「ショウタ様の、邪魔に……? どうしてそうなるかは分かりませんが、それはわたくしの望む事ではありませんわね」
自尊心が傷つけられたのかちょっと熱くなったようだが、すぐにクールダウンしてくれたようだ。ここで少しでも自分の強さに自信があり、もっとプライドが強ければ、邪魔にはなる訳がないとしがみついてきたかもしれない。
だが、俺がどれだけ未知の存在であるかを彼女は十分理解しているらしいな。
「良いですわ、ではサポートに専念させて頂きます。海の上で安全に戦える足場作りはお任せくださいまし」
「……まあ、邪魔しないってんなら連れて行っても良いか。ああそれと、海の下に落ちたアイテムの回収も頼むな。そこはセレンと協力してくれ」
「心得ましたわ。魔石1つとして見逃しませんわ」
『~~♪』
「あら、よろしくお願いしますわ。セレン様」
クリスはセレンの触手を握り握手を交わした。うん、水同士仲良くやれそうだな。
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