一章 第5話 急展開
『急に異世界に来てしまっても安心!!その道のプロがイチから教える、初心者でも簡単に理解できるミステリーブックスのルールとトリセツ 決定版 新法対応 改訂版』
その衝撃的なタイトルにしばらく放心すること約30秒、ようやくまともに口を動かせるようになった。あまりにも親切すぎる。いや、そこじゃない。ツッコミどころが多すぎて、何をどうしたらいいのかわからない。
「これを、読めばいいってこと…じゃないですかね!私たち………初心者ですし………ね!!」
藤原さんがなぜか絶対的自信をこれでもかと見せびらかしてきた。初心者もくそもあるかい、とは思いながら、とりあえず読むことにした。というか読むしかない。現状これを読まないと話が進まない。
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ミステリーブックスの背表紙にあるボタンを押すとその本の世界に入ることができる。
各々の世界には「頼み事」(いわゆるクエスト的な)があり、それを解決することで現実世界に戻ることができる。
「頼み事」を解決し、現実世界に戻るとその本は消滅する。
ミステリーブックスは現実世界にとどめておくとなんかよくないことが起こる。
だから解決してね⭐︎ヨロシク!!
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とまあ大体こんな感じのことが書かれていた。とにかくここを出るには、「頼み事」を解決する必要があるらしいがどれのことなんだろう。なんとなく辺りを見回すと、
「ここでの『頼み事』
悪い魔王を打倒せよ!!!」
と書いてあるプラカードを掲げた藤原さんがいた。さっきからやけに都合がいいな、とは思った。思ったが、まあそもそもこの展開が、常識なんて遥か彼方に捨て去ったようなものだ。でも実にわかりやすい。この手のゲームはこの世に無数に存在する。イメージはしやすい方だろう。
「こ、これから、どうします………?」
魔王を倒せばいいというのはわかった。だが理解も納得も全くしていない。言うなら、『魔王を倒す』という目的をそのまま脳みそにぶち込んだ感じだ。これから魔王を倒すため、どうしていけばいいかなんてわからない。あまりにも情報がなさすぎる。
と、思っていた。が、そうではなかった。思い浮かぶ。この世界について詳しくわかってしまう。この世界が今どういう状況で、僕たちがどうしていけばここの『頼み事』をクリアできるのか。
あまりにも都合が良すぎる!!「作者」がそこら辺の手間を省いたとしか考えられない!手抜きすぎる!そこを知っていくことから物語って進んでくんじゃないんですか…
「なんか、わかる…みたいですね。ここについて」
藤原さんも同じような思考に至ったのか、この状況はいいんだけど、これでええんか?みたいなすごい複雑な顔を僕に向けた。
「僕はいわゆる勇者っていう役職っぽいっすね」
「私は魔法使い?でしょうか」
ここまでの展開が急すぎて互いの格好について気にする余裕なんてなかったが、いざ落ち着いてみると、僕たちは実にそれっぽい衣装を着ていた。
主人公ポジやんけ。勇者とか。最高やんこれ。てことは僕は多分死なない。そして強い。理由は簡単。主人公だからだ!僕を主人公にするなんて作者はわかってるぅ
ということで、これから魔王を倒しに行くための準備を進めていくことになった。多分その間に紆余曲折あるはずだ。そこは手抜きしないで欲しい。こうして、納得できない部分も多々ありながら(ほぼ納得してない)、僕たちは魔王を倒すための一歩を踏み出した。
謎本英雄記 幾千年 @ikusennen1000
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