提琴と君と僕の初恋と

　僕がヴァイオリンを弾く姿を見た君は、無邪気にはしゃいでいた。
「君の音、私は凄く好きだな」
　僕と君は、友達だったはずだ。僕はヴァイオリンを弾き、君はそれを眺めては感想を言ったり、時には全く関係ないことを話し始めたりした。

　しかし、ある時、僕は君のことをコンクールで見つけてしまう――金賞受賞者として、壇上に立つ君を。
　君に裏切られた。そう思った。

『僕は、君のことが好きだった。』

　あの時の君のヴァイオリンの音色と共に思い出す、僕の淡い初恋の話。