本人が望んでいない形だとしたら、それはもはや愛ですらないのかもしれない。
それでも、そう想ってくれる人がいるだけでいいじゃないか――。
「それで、君の願いは? だから僕を呼んだんでしょ?」
ミステリアスでクールだと言われるクラスメイトの野花彩は、おまじないで呼ぶことが出来る魔女だった。
「君は今日から花魔女見習い――彼岸花の魔女、だよ」
「一ヶ月後まで僕の仕事を手伝ってみて、それでも気持ちが変わらなかったら、お礼に君の願いを叶えてあげる」
自分の存在を消したいと願った小鳥遊沙那は、亡者の未練を解消するお手伝いをすることに。
彼岸花の花言葉は、『再会』。
花魔女は、与えられた花の花言葉によって、それぞれ使える魔法が違うのだ。
想いは、重い。
その重さに潰されたり、ハリボテだったことを見抜いて絶望するかもしれない。
あるいは、愛からついた嘘を信じて、見抜けなかった自分を酷く責めるかもしれない。
あるいは、受けた愛に報いるために、何も知らない子どものフリをし続けるかもしれない。
それでも、最後には、また別の真実が現れるかもしれない。
重いは増して、形はいつか変わる。なくなったものは、きっと形を変えて現れるだろう。
レビュータイトルにある通り「伝えられなかった想い」というのが大きなテーマになります。作品の副題にも「あなたの未練、解消します」とありますが、この「想い」というのが「未練」なわけです。
人間生きてると様々な後悔や苦悩が生まれます。それが「未練」というものになっていきます。
亡者たちも、生者たちも、みな何かしらの「未練」を持っているのは皆さん知っての通り。
その「未練」、いわば「想い」に向き合って解決していく、成仏させていく……っていうのが(*作品タイトルに偽りなし)あるのですが、これがまぁ切ないんですよね。詳しくは読めば良いと思うよ。
それと同時に主人公たちのドラマ(ここは詳しく書けません)も重厚です。背景までしっかり作り込まれている「生きている」主人公たちが、それぞれの意味、方法で生きていくところも鮮明明瞭に書かれていて、とても没入感が高く感じました。
またメッセージ性が(良い意味で)強く、幅広くおすすめしたい作品になっています。
完結もしていますから、一気読みをおすすめです!
自分の存在をなかったことにしたい。
そんな願いを叶えるために沙那が頼ったのは、彼岸花の魔女・彩。
彩は一ヶ月間、沙那が自分の仕事を手伝うことを条件に、その願いを叶えることを約束しますが、彼女自身も何か仄暗い過去を抱えているようで — ?
魔女の仕事のお手伝いを通して、二人の過去が少しずつ紐解かれていくこの物語。特に私が素晴らしいと感動したのは、登場人物たちの心情を細やかに描きだすストーリーの繊細さです。
この作品では、メインキャラクターの沙那と彩の心情変化はさることながら、その周囲の登場人物の感情まで非常に丁寧に描かれています。実際、読み進めている間じゅう、それぞれの登場人物の行動やセリフから、彼らがどんな気持ちで何を想い、何を願ったのかが、文章から心に染み込んでくるように感じました。
二人の物語はどんな結末を迎えるのか、ぜひ皆さんも見守ってみてください。
柔らかな文体から始まる物語は沙那の「消えたい」「誰の記憶からも忘れられて、きれいさっぱりなくなくなりたい」という願いから、ほんのり不穏な空気を纏う。
それはもしかしたら、どこかの誰かも心のうちで思ったかもしれない願い。魔女である彩はその覚悟を確認するために、仕事を手伝ってほしいと伝える。
その中で巡り合う無き者たちとの交流を経て、徐々に明かされていく彩の謎と沙那たちの変化。謎が明かされ、かちりと歯車のように嵌っていく様子は読んでいてとても心地よいものでした。
生きるということ。死ぬということ。苦しくて目を逸らしたくて仕方のないことや尽きない後悔を前にして、どのように向き合っていくのか。それを改めて思い馳せることができる、優しい物語だと感じました。
沙那の願いの行方の結末。彩が抱える贖罪の意味。
ままならない心に惑いながらも懸命に生きていく彼女や亡き人たちの姿を、是非とも見届けていただければと思います。
学校での噂話で、魔女が願いを叶えてくれると知った主人公は、魔女と会うための準備をした。主人公が願うのは、自分が消えること。そんな主人公の前に、花魔女と名乗る少女が現れる。それは主人公の見知った人物だった。そして彼岸花の花魔女である少女は、主人公の願いに覚悟があるかを確かめるために、自分のアシスタントを申し付ける。
舌ったらずな子供や恋人に未練がある女性、未練を明らかにしない老人。それぞれの本当の未練を見極め、「成仏」させていく。
そして、徐々に主人公と魔女は中を深めていくのだが、魔女にはある過去があった。
魔女になる前、彼女はただの人間として育った。ただ彼女の母親は早くに亡くなっていた。そして父親は身重の女性と再婚するのだが……。
何故、彼女は花魔女になったのか?
そして、彼女の本当の願いとは?
そして主人公の願いはどうなってしまうのか?
序盤は明るく可愛らしい印象でしたが、
彼女が魔女になり、何を目的としていたのかを知ると、
一転してシリアスな印象になります。
是非、御一読下さい。
誰の記憶からも、自分が生まれたことも生きてきたことも消し去って、きれいさっぱりいなくなりたい。
何でも願いを叶えてくれるという魔女に、女子高生・紗那が頼み込んだのは切実な思いでした。魔女は快諾してくれたものの、ちゃんとした覚悟があるかどうかテストさせてほしいと言います。
願いを叶えるための条件は、幽霊を成仏させる手伝いをすること。魔女の見習いになった紗那が出会うのは、ときに無垢でときに苦しい思いを抱えた幽霊達でした。
届かない幽霊の声や残された家族のその後に涙腺をじんわり緩ませながら、魔女とその見習いが巻き起こす奇跡を最後まで目に焼き付けてください!