五つ目 吸血樹
それじゃあ次は、五つ目の七不思議である『吸血樹』について話すとしよう。
この七不思議は中庭に行けば出会えるんだが、君は中庭の中心に植えられた大きな樹を知っているかい? なんでも学校の創立を記念して植えられたらしいんだが、その樹が七不思議の一つである『吸血樹』なんだよ。
それで、どうしてそんな名前がつけられているかというと、あの樹は近くに来た物に枝を突き刺し、そこから血を吸い取ってしまうからと言われているよ。
血を吸われたモノの遺体は樹の根によって土に埋められ、時間をかけて樹の肥料になるらしく、その近くではその人達の苦しそうに助けを求める声が聞こえるみたいだ。
でも、そんな話が広まっても樹は未だに植えられたままで、樹を切った方が良いという声も上がらない。樹はそんなにも危険だというのに不思議だと思わないかい?
実はこれにも理由があるんだ。創立を記念して植えられたからというのもあるんだが、その樹を一生懸命に世話していた生徒がいた事も理由になっているようだ。
その生徒は誰かに頼まれたわけでも無いんだが、花を始めとした植物全般が好きで、樹がいつまでも学校を見守ってほしいという思いを込めて世話を続けていた。
しかし、ある日の下校中、その生徒は交通事故に遭って亡くなってしまった。それからは樹の世話をする人もいなくなり、樹の根元にも雑草が伸び放題になっていたんだが、どうやらその日から樹は『吸血樹』になったようだ。
学校の人達はその理由を自分達が樹の世話を怠った事で生徒の霊が怒っているからだと思っているようだがそれは違う。
たしかにあの樹の近くに生徒の霊はいるけど、樹が吸血を始めたのは生徒の霊の霊気にあてられて妖怪のような物に変化したからで、自分から栄養を取るために吸血をしているんだ。
だから、未だにあの樹は吸血を続けているし、樹を切る事で彼女の霊が怒る事を恐れて誰も樹を切ろうとしない。勝手な思い込みのせいでずっと犠牲者が出続けているんだよ。
まあ、血を吸われたくなければ、とりあえずあの樹には近づかない方が良いけど、彼女からは色々面白い話を聞けるから、気が向いたら会いに行ってみても良いかもね。彼女に頼めば、樹も血を吸おうとはしないみたいだからさ。
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