二つ目 終わらない鬼ごっこ

 それでは次は、二つ目の『終わらない鬼ごっこ』について話そうか。この七不思議に遭遇出来るのは、この学園の昇降口で、出る時間は特に決まっていないが、主に夕方に出るようにしているみたいだ。


 それで、これはどういった七不思議なのかというと、昇降口で靴を履き替えて帰ろうとした時に突然外履きを見知らぬ少年に奪われ、校舎の中へ逃げられてしまうから、それを追い掛けないといけないんだ。


 因みに、追い掛けている最中は、学校は静まり返っていて、誰とも出会わないんだが、その事から分かる通り、出会った時点でその少年の領域に引き込まれているわけだね。


 そして、校舎内を逃げ回る少年を追い掛け、外履きを取り返した上で昇降口まで戻って来ないといけないんだが、実はそれにはタイムリミットがある。


 タイムリミットは元の世界で昇降口の鍵が先生に閉められるまでで、それまでに昇降口から外に出ないといけないんだが、それに間に合わないと元の世界には帰れず、いずれは存在が消滅してしまう。


 そして、現実でも存在自体が無かった事になり、いなくなった事に気付かれずに少年と上履きを求めて別世界の学校を彷徨い、いずれは消えていく。どうだい? シンプルだけど中々の恐怖だろう?


 足の速さに自信がある人なら、彼との鬼ごっこに勝てる確率は高いだろうが、それでも彼に領域に引き込まれた時間によってはどうにもならないし、焦りすぎて途中で怪我をしたり気を失ったりしたらその時点でアウト。


 彼自身も鬼ごっこには自信があるから、逃げ方も実に上手いし、人間では無いから、高いところから降りても怪我一つしない。


 ここまで聞くと、この鬼ごっこはだいぶこっち側が不利に聞こえるだろう。ただね、実は犬の鳴き声を真似しながら鬼ごっこをすれば簡単に勝てるんだよ。


 どうして犬の鳴き声を真似すれば良いのかというと、彼は生前にペットの犬を可愛がっていたんだが、イジメが原因で少年はこの学校で亡くなってしまったようでね。


 犬の鳴き声を聞くと、愛犬の事を思い出すみたいで、死別してしまった愛犬を思いながら立ち止まって泣いていたり少し様子を見に来たりするんだ。だから、そこを捕まればすぐに鬼ごっこは終わらせる事が出来る。至って簡単な話だろう?


 まあ、最近は愛犬の元気な写真や鳴き声を録音した音声を手に入れたから、その作戦にも引っ掛かり辛くなったようだけど……って、そんな話は今は良いか。


 という事で、これが二つ目の七不思議である『終わらない鬼ごっこ』の詳細だ。

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