一つ目 引きずり込む手
まずは一つ目、『引きずり込む手』から話そうか。この七不思議が現れるのは、3-Aの教室の黒板で、現れる時間も限られているから、出会うのが中々難しいんだ。
その時間というのは、いかにも怪談らしい午後4時44分で、その時間に一人で教室にいると、いつの間にか黒板にとある言葉が白いチョークで書いているんだ。
その言葉というのが、
『しがんはいけない』
という物なんだが、これだけだとまったく意味がわからないだろう? それも平仮名で書いてある物だから、その言葉がますます何を意味しているかがわからない。
だが、重要なのはそこじゃない。その言葉自体が重要なんだ。そして、黒板に書いている言葉なんだが、これは決して口に出して読んではいけないよ。うっかり口に出してしまうと、黒板から無数の白い手が伸びてきて、その人を黒板の中へと引きずり込もうとするからね。
それじゃあ、この白い手は誰の手なのかと思うだろうね。実はこの学園にはある秘密があって、ここには元々
そこには空襲から身を守ろうとした人々が逃げ込んでいたんだが、空襲で崩れた家屋の残骸がその入口を塞いだ事で中にいた人々は外へ出られなくなり、飢えと渇きでそのまま亡くなったという。
つまり、白い手の正体は亡くなった人々が伸ばしてきている手で、助けを求めると同時に仲間を増やしたいと思っているわけだ。まあ、助けを求められても今度は自分が引きずり込まれて、仲間入りをするだけなんだけどね。
さて、ここまで聞いてあの謎の言葉は一体何なのかと思うだろうから、ここからはその解説をしよう。
まず、あの言葉の中にある『しがん』なんだが、これはこの世を示す『
彼らは此岸に向かって手を伸ばしているが、彼ら自身が来る事は出来ないし、それを志願しても叶えられる相手もいないからしても意味は無い。
よって、あの『しがんはいけない』は『此岸は行けない』でもあるし『志願はいけない』でもあるわけで、それを口にする事で彼らにお前らは此岸には来られないし志願しても意味はないと言っている事になり、それならお前も仲間に加えてやると彼らが考えて引きずり込むのも分からなくはない。
でも、そうなると一つ不思議な事がある。その『しがんはいけない』という言葉は、一体誰が書いたのかという点だ。
言われて自分達が良い気分にならない言葉を彼らが書くとは思えないし、七不思議と遭遇した人物が書いたわけでもない。
それじゃあ一体、その言葉は誰が書いたのだろうね。
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