四つ目 幽霊ランナー

 さて、そろそろ折り返し地点だ。今度は四番目の七不思議、『幽霊ランナー』について話そうか。


 その名前から何となく察せると思うけど、この七不思議と出会えるのはグラウンドで、主に逢魔が時、だいたい午後六時頃に現れるみたいだよ。


 陸上部や野球部などのグラウンドを使う部活動の生徒達が帰った後にトラックに来てみると、タッタッとリズムよく走る音がどこからか聞こえ、その音の出所がどこなのか探っていると、突然後ろから何かを渡されるんだ。


 見ると、それは人間の腕の骨で、それに驚いている内に、他のコースではいつの間にか何人ものランナーが競争を行っていて、自分もそれに参加するように言われ、わけもわからずにとりあえずレースに参加する事になる。


 ただ、参加するまでは良いんだが、他のランナーというのが結構速くてね、その上、こっちは何故レースに参加しないといけないのかわからず、準備運動も不十分な事から中々うまく走る事が出来ない。


 そして、レースに負けてしまうと、その人物は彼らの仲間に加えられてしまい、あたかも自分は初めから彼らと一緒に日々陸上競技に熱心に取り組んでいたかのように思い込まされてしまうみたいだ。


 さて、それじゃあ彼らがどうしてレースをしているかについて話そう。かつてこの学園は陸上競技の強豪校だったらしく、当時の部員達は他の学校を寄せ付けない程に強かったようだ。


 そしてある夏の日、大会の会場に向かうために部員達がバスに乗っていたんだが、そのバスが事故に遭って横転し、そのまま部員達は亡くなってしまった。だが、部員達の魂はそのままあの世へは行かず、走る事を諦められないまま学校のグラウンドに縛られ、今でも仲良く走り続けているようだ。


 因みに、誰かをレースに参加させ、負けた人を仲間に加えているのは、走る事の楽しさを共有したいかららしく、自分達に勝った相手がいた時は、その強さを素直に讃え、巻き込んだ事を謝ってから校門を出て行くまで見送ってくれるよ。実にスポーツマンらしいね。


 まあ、この七不思議は走ってない生徒がランナー達の走りをしっかりと見ている分、ズルをして勝つ事は出来ないから、足に自信が無いならその時間にはグラウンドには近寄らない事だね。

 ただ、彼らも時には違う相手とのレースを楽しみたいようだから、足に自信があるなら彼らとのレースに付き合ってみてくれ。きっと、彼らも心から歓迎してくれるはずだよ。

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