自分らしく生きることの難しさ

一番胸に刺さったのはみらちゃんが名刺を渡さなかった増美さんに放ったセリフ。

「うそ。みらを名刺を渡すべき人間として認識していなかったんでしょ」

 自分が増美さんの立場で名刺を渡したかと言われたときに言葉に詰まります。
人権団体に所属し「差別はいけない」と声を上げる増美さん。
みらちゃんから自らの差別行動を指摘された増美さんにシンクロして、私もズキンと胸が痛みました。

 セクサロイドという題材で書かれてはいますが、これは形を変えて現行社会に進行形ではびこるリアルな問題です。
 つらい現実から目を背けることなく問題提起する本作は、当然スッキリと大円団で終わることはありません。

しかし「たとえ小さなことでも自分にできることを一人ひとりがやっていくことで、きっといい方向に変わっていく」という未来への希望が光るラストに、ポッと心に明かりが灯るような思いで読了いたしました。

素敵な物語を読ませていただき、ありがとうございました(⁠ ⁠ꈍ⁠ᴗ⁠ꈍ⁠)

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