暴虐
血に飢えた鴉を肥えさせろ。鼻の赤い豚は斬り裂いてしまえ。あらゆる月は死んだ。水面には震える肢体が鈍色に踊っている。
羽根をもがれたカラスアゲハは既に轢死した。残骸から一粒の暗澹を掬い上げるといい。それは琥珀色に光っているだろう。柘榴のように美しくはない。視界がやがて紅に染まったのなら、君が飛び降りるべき番だ。温厚な空を愛でよ。母なる大地は既に犯されている。
陵辱の跡に興奮を覚えたのなら、接吻と芸術の先で君を梟が待つだろう。緑色の目が光っている。肉は甘いと彼は言う。血漿は上質なソースに他ならない。戸を開けて外を見るがいい。そこかしこで悲鳴が響いている。
ベルベッドのソファーに腰掛けて、マネキンを愛でる顔には既に悲嘆が浮かんでいる。生命は冒涜された。物質は全てを破壊する。無限の円環の中で、赤青黄色と蔑んでいる愚か者たちの爪は死んでいる。眼球が焼ける。網膜は痛みを持たない。幸いにも未だ世界は黒い。真っ白なキャンパスは生まれたことすらなかった。勘違いの塗り重ねの上に、ピーナッツバターで飾り付けをしよう。
死神が笑っている。表情をもつものは既に彼女だけだ。死神が笑っている。死神が笑っている。死神が笑っている。死神が笑っている。
死神が笑っている。
死神が笑っている。
死神が嗤っている。
赤い花よ、咲くがいい。
Focus of Madness 鹽夜亮 @yuu1201
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