淡雪のとけるような、物哀しさ。

『弔い』のタイトルのとおり、これはある異世界の、葬儀の文化にまつわるお話です。
舞台は、果てまで広がる氷原と白骨めいた木立、凍てつくような暗い夜。そこで一人の旅人が、悲しみを抱えた女性とほんのひととき人生を交差させます。
内容は悲劇のはずですが、ときどき読者がびっくりするような事実も明らかになったりして、語り口調に悲壮感がないので重い気分にはなりません。
静かな雰囲気ながら、最後の一文まで異世界を旅する面白さ、興味ぶかさにあふれた作品です。