第5話 いつものことだけど
仕事見学、、。
その名の通りなのだから、わたしが憂鬱なのもわかると思う。
行きたくないなぁ、、、。 ほんとに。
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「仕事見学参加する皆さん!
此方ですよ!!僕についてきてください。」
無駄に出されたメガホン。雰囲気作りのためか、笑いを狙っているのか知れないけど私からしたらただの野球観戦客にしか見えない。
某虎のマークだし。なんかシュールだな。
「皆さんはご存知でしょうが、」
そう前置きして始める。
「この世界は夢を全力で応援する世界です。
私達大人には夢をかなえさせる義務があります。
そして皆さんはまだ夢がない卵なのです。
この仕事見学を通じて夢を見つけてくださいね!!」
「はーい!!!」
私の周りの子供たちは目を輝かせながら大人を見ていた。
私と違って。
その目がうらやましい。
「ここは~~ですね。
まぁ普段のわたしの職場です。」
そういう私にとって無駄な説明をしていった。
「以上で見学は終わりです。質問はありますか? 」
私より幼い少年少女たちの目にはとても有意義な時間に思えたのか沢山の手が上がった。
昔の私達のように。
「じゃあそこの君。どうぞ」
「えっと、、特別室ってなんですか?」
その時、時間が止まったように
そのエンジニアの人が少しの間動かなかった。
「特別室は君たち子供が何かの問題を起こしたときに、その問題を今後起こさないようにする施設の名前です。元の場所に戻れるのかはその子次第ですがね。
まあ優秀な子ならすぐ帰ってくると思いますよ。」
その子次第?
もしかして
馬鹿馬鹿しい。
奏が問題を起こして特別室送りになったのは今からだいぶ昔のことだ。
このシステムが出来てから少し経った頃、
奏、私、13は昔の世界のようにまだ仲良しな友達のままだった。
一つだけ違ったのが
私も13も、もうなぜか名前を憶えてないということだった。
奏だけ覚えていた。
そのエンジニアの人が言うには、優秀なら戻ってくるということだ。
私達の中で一番優秀だった奏は戻ってくるはずだろう。
でも奏はかえって来てない。
名前も名簿から消えていた。
奏、今どこにいるの?
あの頃の三人に戻りたい。
心からそう思った。
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