第3話 変わった先生
「こんにちは。一番さん。貴方の担任の110番です。よろしくね。」
そういって笑った先生を見て私は
「ああ、まただ。」と分かりきった現実を再認識した。
「少しだけお話しましょうか。」
先生の口調は優しくも、変わらない芯?のようなものがあるように感じた。
そしてその手には見慣れたパンフレット。
「夢がない子の指導の仕方!!」
そう銘打たれたパンフレットはいつの間にか私にとって見慣れたものになっていた。
ああ、あの昔が懐かしい。
「はい。」
私はそういって微笑む。いつものように。
この先生もか、、。という感情を心の内に秘めながら。
「去年も同じようなことを聞いたと思うのだけれど一応確認のためにいってもいいかしら?貴女に夢はないのよね?一番さん?」
「はい。ありません。」
生徒指導室。普段なら静寂で包まれるその教室に二人の女性の声が響く。
「そう、、、。」
そういって、彼女はパンフレットのようなものを閉じた。
「、、、?」
そのパンフレットがないとなんにもできないんじゃ、、。
「これからは個人的な質問になるわ。」
好きなものはある?」
「す、好きなものですか?」
え、?好きなもの?
驚きを隠せずにいると、
「例えば本が好き!とかない?」
え、、えっと、、。
「ない、、ですかね。」
初めてだった。こんなことを聞かれたのは。これまでの先生はみな、パンフレットどおりの質問だったから。
答えられないと怒られたし。
優しい、、?それとも騙されてる?
それとも、、、、、
「私はね、貴女に夢を持つことを強制したくないの。」
「え、、、?」
理解が追い付かなかった。
、、、?
え、?
夢を、、強制しない??
「あ、ありがとうございます。」
悩んで悩んでやっと出た言葉は
何時もの口調ののままだった。
そうか、やっぱり私は人を信用できないのか。
「だからね、自由にしてほしい。貴女には。」
自由?自由なんてないんじゃないの?
夢を持つことを強制して、強制して、強制して、強制して、、、、
そうだ、私はいつも異端。
その後のことは覚えていない。
ただ、いつものままだった気がする。
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