夢の先へ

擬音幽花

第1話 失われた日常を思う

「夢を持つことは大事なんです!!

人の生まれ持った責務なんですよ!!」

インターネットの中に用意された講演場。静寂に包み込まれるその場所をよそに太陽が無駄に明るくその場所を照らす。

AIの開発者らしい彼はそこで声を張っていた。

その周りをおびただしい数の人が囲んでいた。

そして檀上の上の彼は捲し立てるように話していく。 

「皆さんっ。わたしは子供たちを、大人たちまでもを救いたいのです!!

夢半ばで倒れた人、夢をあきらめた人。

そんなひとたちをわたしは救いたいのです!!

未来のこの国はあなたたちにかかっているのです!!

わたしに皆様のかけがえのない力をお貸しください。

必ず期待に応えて見せましょう。」  

静寂_から急に会場を包み込む拍手。 

感動して泣いている人までいた。

これが

のちのこの国の運命を担うプロジェクト、

「NoNextDream」略して「NND」の始まりだった。 

わたしは講堂に向かって手を伸ばした。 

しかしその手は非情に遠退いていった。

まるでわたしのことなんか見てないように。  

わたしの存在を知らないように。

「まって。ねえまってよ!!  

おいていかないで。わたしがまだいるの!!!」  

自分の全力で叫ぶ。 

止まらないとわかっているのに。

「おかぁさん!!!」

⊶⊶⊶⊶⊶⊶⊶⊶⊶⊶⊶⊶⊶⊶⊶⊶⊶⊶⊶⊶



、、。

また、あの夢か。

新学期の憂鬱からだろうか? 

よくあの夢をみてしまう。

寒い中、ベッドから抜け出し朝支度をする。

「さっむっ、、。」 

ついつい呟くと

「ピッ」機械音が鳴り響く。エアコンがつけられる。

便利になったなー。とあたらためて実感する。

まぁ禁止されたことも多いけど。

「、、、。学校が始まるまであと10分です。

早く殻入ってください。」 

「、、。うるさいな。わかってるってそう。」 

「ー。何か言いましたか?」 

「なにも。」 

妙に人間味がある少女をみつめ、そう答える。

自律思考型ロボット。そう呼ばれている彼女ら、彼らは今やほぼ全ての中学以上の者に与えられた。名前はそれぞれ違うみたいだけど。この子に逆らうとろくなことにならないんだよね、、。

そして殻は学校などの場所につないでくれるインターネットのシステムだ。

「親にまた会ってみたいな」 

「親?とはなんですか。」  

人間味のある声で奏は言った。

「、、、なんでもないよ。」

急にでた言葉はもう昔の日常が訪れないことを無情にも示していた。

⊶⊶⊶⊶⊶⊶⊶⊶⊶⊶⊶⊶⊶⊶⊶⊶⊶⊶⊶⊶⊶



 2___ 年

日本は少子高齢化対策としてある対策を打ち出した。

自分が夢でみた講演を現実のものにしようと政府は企てた。  

最初にみたゆめを追いかけさせる。そう、、、つまり次の夢が生まれない。

日常のすべてのことにインターネットがあり、そしてかかわりあっていく。バーチャルとリアルの境目がなくなり、どこでも、誰でも「夢」に固執していった。  

夢があることが正しくて夢を叶えることだけが素晴らしい、夢はいい、夢は持たなければいけない。そんな政策の中、わたしは親の元を離れ一人で(ロボットいるんですけど)過ごしている。

そしてこの世の中では珍しい 

       

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