読み始めると物語世界に一気に引き込まれて、先が気になってつい夜更かししてしまいます!
一見、静謐で美しい世界観に見えますが、真実が分かってくるとなかなか恐ろしい。
その恐ろしさは自然そのものであり、決して架空のモンスターなどではありません。
「精霊」という言葉で記されてはいるけれど、時には人に恵みを与え、時には命を奪ってゆく厳しい姿は自然のことわりそのものだと思えます。
次々に謎を提示してゆく作者様のストーリーテリングが素晴らしい。
1つ明らかになればまた1つ謎が増え、あと一話、いやもう一話と続きを読んでしまう!
面白い作品をいくつか見つけ終えて満足していたけれど、まだ知らない作品があったなんて!
カクヨム、層が厚いなあ!!
拙作にブクマしてくださったおかげで出会えて感謝です。
私は笑いどころのある作品を好む傾向にあるのですが、この小説のようにほとんどずっとシリアスでも面白いものは面白いんだということを身に染みて想起させられました。
あなたも『セラの森』を読んで睡眠不足になりましょう!!(笑)
骨太のファンタジー作品です。
精霊の存在は超常現象に近く、それでいて人々の生活にも密接しています。しかし普通の人には視認することができないという、一方通行の関係でした。
そんな世界において、なぜか主人公だけは精霊が見えます。
だからこそ彼は生まれ故郷の禁忌を破ってエルダーの木を焼くことになります。
この時点で、精霊は大いなる存在であっても常に正しいわけではない、というテーマが確立します。
さらにいえば、そんな精霊を利用して実りを享受してきた人間たちも必ずしも無実ではない、という表裏一体のテーマにもつながります。
主人公が冒険をするのは、この表裏一体のテーマに決着をつけるためです。
ネタバレになるので詳しく語れませんが、主人公の出生は物語のテーマに直結するものであり、人間と精霊の在り方をどうするのか天秤にかけるものです。
そんな壮大な背景を背負った主人公が、自分の秘密を知らないまま、生まれ故郷を飛び出して、外の世界に触れていきます。
世界中にある精霊と人間のつながりから、自分が何者なのかわかったとき、主人公は大いなる選択を求められます。
精霊と大自然と人間、これら共犯関係にある繋がりを維持するのか、それともたとえ大破壊が発生しても新しい秩序を求めるのか。
さらにいえば、もし共犯関係を維持することにしたら、自分自身が犠牲になることを受け入れないといけません。
主人公は血のつながらない家族である弟を通して、この究極の選択肢に悩むことになります。
はたして主人公は、どちらの世界を望むのか?
それを見届けるのは、このレビューを読んだあなたです。
精霊が見え、精霊の声を聞ける少年・セラを主人公とする、壮大な物語です。
森で家族と共につましく暮らしていたセラは、ある本がきっかけで自分の父親に関する真実を知ります。
それは、森の精霊にまつわる、人々が生きていくためにたどったあまりに恐ろしい歴史。
精霊を通して真実が見えるセラだからこそ、他人には理解されない思いに苦悩します。その果てに、セラが決断したこととは――
生きようともがく人間と、時に寄り添い、時に恐ろしい呪いを下す精霊。
共に生きる存在でありながら、人と相容れることはない。その不可思議な不気味さ・恐ろしさが物語をダークな色彩で包み込みます。
その中で懸命に生きる人々と、セラが築いてゆく絆。
森を出たセラが、海を越えて出逢う様々な書物、様々な人生。
人々の広い世界と、終わりのない精霊たちの世界。
それらが混ざり合って、果てのない壮大な物語を作り上げています。
この物語に飛び込めば、読者の想像力もとどまることがないでしょう。
あまりに広く、どこまでも深いセラの世界を、どうか心行くまでじっくりと味わってみてください。
物語の主人公セラは、精霊の姿が見える特別な少年。
セラは訳あって森の精霊を殺し、家族と離れて、自らのルーツを探る旅に出ます。
深く悩み、傷つきながらも旅を続けるセラは、幾つもの不思議な体験をし、成長していきます。
知的でどこか陰のあるセラとは異なり、セラの弟トニヤは、純粋で素直な優しい少年。
トニヤは森を離れてしまったセラを探して、旅をします。
この物語は美しく残酷な世界観でありながら、心に染み入る温かさに満ちています。
それはセラの出会った人たちやトニヤが、愛に満ちているから。
旅をする中で出会う風景や、人々の息遣いが丁寧に繊細に描写されていて、世界観にすうっと引き込まれていきます。
神秘に満ちた、美しく切ない珠玉のストーリーです。
一話一話の読了後、心に染み入るような余韻がとにかく素晴らしい作品です。
ぜひご一読を♪
精霊の姿を見ることができる孤独の少年、セラ。
命の森に暮らす彼は、ある日失踪したはずの父親の声に呼ばれる。
……というところから始まる壮大なファンタジーなのですが、特筆すべきは読めば読むほどに引き込まれる世界観でしょうか。
最初はたくさんの謎があり、主人公のセラとともに真実を解き明かしていく旅が始まります。
その謎が明らかになるタイミングが素晴らしく、真実を知っていく度に鳥肌が立ってしまうのです。
セラが出会う人々も個性的な人物が多く、まさしく一緒に旅をしている感覚になります。
皆さんもセラととともに真実を探す旅に出かけませんか?
重厚なファンタジーを味わうことができるおすすめの作品です。