第6話 対応
「それにしても、これは困ったものですね」
イッコは腕を組み、顎に手を当て考える素振りを見せた。
「どうした?」
「いえ、実は私たちも先程までホリと共にこの町を調査していたのですが……」
イッコが話を進めようとするのをハルキが止めに入る。
「ちょっとまて。今国家情報保安局は『奇跡の剣』で手一杯なんじゃないのか? なんでお前こんなとこにいるんだ?」
「そ、それは…… こちらの町のカタデリー教団への対応を任されてですねえ……」
「ああ、あれか、こないだミイラ燃やしちゃったからか」
「ち、ちがぃ……」
「いいっていいって。ごめんな、おじさん、気ぃ使えなくて」
「くっ…… 話を戻します! それでですね、この宿にも他の建物の中にもカタデリー教の痕跡は一切ありませんでした。あまりにもなさすぎるんです。町全体でカタデリー信仰の情報が隠蔽されている可能性があります」
「ふむ、確かにな」
「ですのでホリと連絡を取り、引き続きこの町の誰がカタデリー信仰の情報を操っているのかを探っていくつもりです」
「なるほどなぁ。んじゃあよろしく。俺らは帰るところだし、別に依頼でもなんでもないから。一般市民が情報を国家に提供いたしました、お終い」
「そうですか、わかりました。本当におとなしく帰ってもらえるんですね?」
イッコは念押しするように見るとハルキは軽く笑い、当たり前だろと言った。
それを見て何かを察したのか首を振り、イッコは窓から姿を消した。
「おい、ニッタ」
ハルキが真剣な顔で言う。
「はい、なんすか?」
「あの白仮面な」
「はい」
「フェイクだぞ」
「え? どういう事っすか?」
そんなニッタを見たハルキはニヤリと笑い
「あいつは最初から気付いてたぜ」
と呟いた。
そして立ち上がり、ニッタに背を向けると、
「まあ、せいぜい頑張れよ」
と言い残して部屋から出ていった。
それを見送ったニッタは一人ポツンと残された部屋の中、白仮面を手に取り見つめながら
「やっぱりよくわかんない人だなぁ……」
とため息をついた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます