第20話 ラストメッセージ
天の門から見下ろせば遥か彼方まで何もない、だだっ広い平野が広がっている。
空には白い月が浮かぶ。
ダンは目を閉じ、ジャガーノートに向かって身を投げたアイシャを思い出す。
城壁から飛び降り、アイシャの体は死を迎えた。アイシャの魂は体の束縛を離れてジャガーノートに入り込んだ。メインコンピューターからの司令を退けジャガーノートを盗むことに成功したアイシャは、センサーを光らせモールス信号でダンに遺志を伝えた。
『生きて』と。
スロープは降ろされ、門は開いたまま。今や誰でも自由にBWに上がってくることができる。
でも誰も門の外へ出たりしない。
この世で安全なのは城壁で囲われたAWエリアだけなのだから。
「なぁ、アイシャ。『生き残る種とは最も強いものではない。最も知的なものでもない。それは変化に最もよく適応したものである』って言っただろ?
この世界に最も適応したのはお前だ。生き残るべきはお前だったんだ」
力なくダンは呟いた。
ITの世界で絶対的な力を授かったアイシャはIT世界の破壊神となった。
これは神の領域に踏み込んだ人間に与えられた罰なのかもしれない。
地平線の彼方から、かすかな地響きとアメージンググレイスが聞こえてきた。
聖者の行進 仁科佐和子 @sawako247
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